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第四十話 南無大慈大覚白蛇大権現様
▼ごく普通の人々が、ある日突然正気を失い、
あたりかまわず落書きをはじめる奇妙な事件は、
京都に端を発し、今や日本全国に広がりを見せていた。
それは人の心に感染する鬼の仕業だった。

▼捜査を担当していた京都府警察本部の北大路警部は、
主だった事件の背景に同じパソコンが関係していることをつきとめた。
そのパソコンの持主は卯乃の弟の達也のものだった。

▼落書き事件の主犯の容疑のかかった達也から事情を聞くため、
卯乃、猿渡、鳥居、犬飼、そして北大路警部の5人が卯乃の弟の達也の部屋へ向かった。
達也の部屋は、居間の向こうの階段を上がった2階の奥。
卯乃が達也の名前を呼びながら部屋の前までやってきた。

【卯乃】
達也ー。達也ー。

【達也】
なにー?

【卯乃】
なんだ、いるんじゃない。
達也ー。入るよー。

がらっ。

▼卯乃たちは、達也の部屋の引き戸を開けて中へ入った。

【達也】
なにー、お姉ちゃん。

【卯乃】
何これ?
達也なんなのよこの部屋。

▼達也の部屋は床にも壁にも天井にも紙が何重にもびっしりと貼られ、
その全ての紙に描き殴ったような絵が描き込まれていた。
達也はその、禍々しい小さな空間に置かれた勉強机の前に、
平然と座っていた。

454tatsuyaroom.jpg

【達也】
何って僕の描いた絵だよ。
僕、漫画家になりたいんだ。
お姉ちゃんだって知ってるだろ。

【猿渡】
達也君。なんでこの人がお姉ちゃんってわかるの?
望月さんのこの恥ずかしい姿。
君はじめて見るよね。

【達也】
あれ?そうだっけ?
そんな事ないよ。

【北大路警部】
達也君、ちょっと君のパソコン調べさせてくれるかな?

【達也】
だめだよ警部。
これは僕のパソコンだよ。

【卯乃】
達也。なんでこの人が警部だって知ってるの?

【ウサギ】
卯乃。ビンゴだ。
達也の中に大鬼がいるぞ。
大鬼は自分から発生した小鬼の記憶を共有する事がある。
この前、下鴨警察署で暴れた「手鬼」の見たお前や警部の事を覚えてるんだ。
達也の中にいる鬼は、
落書き鬼の親玉。大鬼だ。

▼その時、北大路警部の無線機が鳴った。

ピピッ、ピピッ。

【北大路警部】
ちょっと失礼。なんだ中村巡査。

【中村巡査】
警部、府警本部から連絡がありました。
市内に怪物が多数出現。
現在執行中の公務を中断しすぐに本部に帰投されたし。

▼その無線機からの報告は、
スピーカーを通してその場にいる全員が聞いた。
比叡山の結界を破って出現した鬼は、
京都の街なかで暴れているようだ。

【達也】
ふふふっ。なんだか盛り上がってきたね。
僕みたいな低級鬼が鬼門の解放に一役かえるかもしれないなんて。
スサノオさま~誉めて誉めて~。

【卯乃】
達也何言ってんの?

【達也】
お姉ちゃんたちもほら落書きしてごらんよ。
楽しいよ~。
絵を描くって本当に素敵な事だよ~。
さあ、さあ、おいで。
めくるめく落書きの世界へ~。

【卯乃】
猿渡さんっ。

【猿渡】
ボロンティーク、眠れっ!

▼達也は猿渡の睡眠術で一瞬で眠ってしまった。
落書きだらけの床に倒れこんだ達也に、
泣きながら駆け寄った卯乃。

【卯乃】
うう~達也。たーつーやー!
どうしちゃったの。
お姉ちゃん、気づいてあげれなくてごめんね。
ごめんね。

【ウサギ】
灯台元暗しだったな。
この家には浄化されていない鬼の尻こ玉が本殿にたくさんある。
俺たちウサギは鬼の音を聞き分けて鬼を見つけるんだが、
尻こ玉から出る鬼の音が大きすぎて気づけなかった。
まさかこんな身近に鬼が、しかも大鬼に憑かれた者がいたとはな。

【猿渡】
警部さん。
私たち今から達也君の心の中に入っていって、
この落書き事件の元凶の大鬼を退治してきます。
警部さんはこの街を守ってください。

【北大路警部】
心の中って?え?

【猿渡】
警部さん、わたしのお母さんもそうだったの。
鬼は人の心の中に棲む病原体みたいなものなんです。
そんな鬼に感染した人が落書きをしたり、悪い事をするんです。

【北大路警部】
本当なのか?

【猿渡】
はい。信じてください。
だから鬼に憑かれた人の心の中に入っていって、
その鬼をやっつけたら、
正気を取り戻せるんです。

【北大路警部】
わ、わかったような、わからんような・・・。

【猿渡】
それでは行ってきます。
わたしたちが帰ってくるまで、
達也君の体を安全な場所へ。

【北大路警部】
わ、わかった。

【猿渡】
それじゃみんな行くよ。

【卯乃、鳥居、犬飼】
うん。

▼卯乃、鳥居、犬飼に呼びかける猿渡。
もうすっかりリーダーだ。
4人は猿渡の母の時と同じ要領で、
眠る達也の鼻の穴に飛び込んでいった。

ずばうううっ!

▼一瞬辺りが閃光に包まれたかと思うと、
次の瞬間4人の姿は消えていた。
部屋には、昏々と眠る達也と
一人、茫然自失でたたずむ北大路警部が残された。


▼同じ時刻。ここは上終
かみはて
先生が入院している大学病院。
空には黄一たちの五匹の竜が駆け巡り、
無数の鬼が飛来している。
地上ではあちこちから火の手が上り、
得体の知れない怪物、鬼が暴れている。
その様子は病院の中からも確認できた。
医師も患者も大混乱の中避難をはじめている。
外へ向かう人の流れに逆らって5階の上終先生の病室に、
あの、修学院高校理事長兼、
宮内省皇宮警察本部長にしてツキヨミの神様。
六条宮玄仁
ろくじょうのみやくろひと
がやってきた。
今日は5、6人の部下を従えている。
六条宮は上終先生の病室へ入っていった。

【六条宮】
上終先生。
あなたを朝廷政府で保護する。
すぐに避難準備をせよ。

【上終先生】
あ、理事長。
何事ですか?なんだか街中が混乱しているようですが。

【六条宮】
常世の国にいる鬼が、
比叡山の封印を破って
この現実世界に攻めてきたのじゃ。
そなたをここで死なすわけにはいかんからな。
安全な場所まで避難するぞよ。

【上終先生】
他の患者さんたちは?

【六条宮】
さあなぁ、逃げ足の早い者はとっくに逃げてるであろう。

【上終先生】
はあ、わかりました。まいります。

▼上終先生は六条宮とお付の人たちに囲まれて病室を出た。
一行が病院の1階に降りてきたとき、
鬼の放った鬼弾が避難途中の上終先生たちのすぐ側に着弾した。

どがあああん。

【上終先生】
うわあああっ

▼その爆発の勢いで上終先生たちは吹き飛ばされ、
床に倒れこんだ。
しばらくして頭を上げると、病院の壁に大穴が開いており、向こうが見えた。
さらに土煙が晴れると、あちこちに火の手が上がる京都の街が見えた。

▼そして目の前の病院の庭には、
先日上終先生を迎えにきた白蛇教団の信者たちがいた。
信者達は上終先生がいた病室に向かって祈りを捧げていた。
しかしすでに多くの信者が力尽き倒れている。
信者の一人が上終先生を見つけた。

【信者】
おお、大権現様だぁ。
大権現様がお出ましになられたぞー!
みんなー立ち上がれー。

▼疲労や怪我で倒れ込んでいた信者が立ち上がりはじめた。
老人から子供まで、火災のススや土で汚れた顔に笑みを浮かべていた。

【上終先生】
みなさん、ずっとここにいたのですか?

【信者】
大権現様。われら白蛇衆は大権現さまと共にあります。
白蛇大権現様。我らを導きたまえ。

【上終先生】
みなさん。わたしはみなさんのご期待には応えられません。
わたしにはみなさんを助けてあげられる力は無いのです。
どうかみなさん。私のことは諦めて、ここから逃げてください。

▼信者に語りかける上終先生を制止するように、
六条宮が口を挟んだ。

【六条宮】
上終先生。
あちらに車が来ておる。
すぐにここを脱出するのだ。

▼その時、信者の最後列から悲鳴が上がった。
鬼が現れたのだ。
鬼の数は3匹。無抵抗な信者をとらえては一呑みにして食べている。

【信者】
大権現様ー。大権現様ー。

【六条宮】
上終先生。早く来い。ここはすぐに鬼に囲まれる。
こやつらの事は諦めよ。

【上終先生】
いや、理事長。少し待ってください。

【上終先生】
みなさん。
逃げてください。
はやく。

▼それでもその場を動こうとしない白蛇教団。
上終先生が思わず信者の中に飛び込んだ。
そして教団を率いている、先日病室に入り込んできた老人。
吉川比呂家に駆け寄った。

【上終先生】
あなたこの人達のリーダーでしょ。
はやくみんなを連れてこの場を離れなさい。

【吉川】
わたくしたちのリーダーは貴方様です。
白蛇大権現様の導きにわたしたちは従います。

【上終先生】
なら、わたしの言う事を聞きなさい。
早くここから逃げるのです。

【吉川】
その必要はありません。
貴方様が白蛇様としてお目覚めになられましたら、
あのような悪鬼など恐るるに足りません。
我らを、我らを、いやこの日本を、お助けくださいませ。

【上終先生】
蒙昧な事をおっしゃらないでください。
みなさんの中には子供もいるじゃありませんか。

▼そうしている間にも鬼の数が増え、
無抵抗な信者たちが次々と鬼に食べられてゆく。
信者達は迫る恐怖に怯えながら、
目をかたくつむり、ひたすらにお経を唱えている。

【上終先生】
なぜ従ってくれないのです。
わたしはどうすればいいのです。

【吉川】
古来より伝わる言葉です。
白蛇様、わたくしに続いてご発声を。
プルルン。

【上終先生】
なんですと?

【吉川】
さあ、我らを哀れにお思いでしたら、
ご発声を、プルルン。

【上終先生】
プルルン、

【吉川】
クプルプ

【上終先生】
クプルプ、

【吉川】
チャマヘス・バカム

【上終先生】
チャマヘス・バカム

【吉川】
変身。

【上終先生】
変身。さあもういいでしょう逃げてください。

【吉川】
そして蛇を、白蛇を心に思い描きくだされ

【上終先生】
えっ。白蛇?うわあああ!

ずばううううっ!

▼まばゆい閃光。轟く地響き。吹きすさぶ暴風。
その場にいた全ての者が地面にひれ伏した。
そしてその混乱の中、頭を上げた者の視線の先には、
20メートルはあろうか、巨大な白蛇がいた。
南南東を護る神シャンディーラの化身は自分自身にその使いの白蛇を宿し、
白蛇に変身する。

454shirohebisama.jpg

▼巨大な白蛇は天を仰ぎ、どんどん大きくなってゆく。

【信者】
白蛇様じゃー。白蛇様のご降臨じゃー。

【信者】
白蛇様ー。大覚白蛇大権現様ー。

【六条宮】
ちっ、忌々しい信者ども。
勝手に覚醒させおって。
まあよい。
ここは先生にがんばってもらわないと、
この状況では、もはやわたしの命も危うい。

▼白蛇はどんどん大きくなってゆく。
病院の壁を壊し、庭の木をなぎ倒し、
取り巻く信者達も慌てて後ずさりした。
透き通るように真っ白な鱗。
輝く深紅の眼。
高く高く鎌首を上げたその蛇は、
今は全長40メートルを優に越えていた。
そしてその巨大な白蛇が天に向かって大きく吠えた。

ぐおぉぉぉぉぉん

▼これ以上大きくなると信者達まで潰されてしまう。
その寸前で蛇の巨大化が止まった。
と同時にビルの5階ほど上にある蛇の頭が、
信者達を襲う鬼を睨んだ。
立ちすくむ鬼達。
まさに蛇に睨まれた蛙。
そして次の瞬間。
一陣の風が吹いたかと思うと、
その辺りにいた鬼が消えた。

シュバアッ!

▼天高く掲げた鎌を振り下ろすように、
白蛇がものすごいスピードで鬼を食べたのだ。

【信者】
白蛇様ー。白蛇大権現様ー。
わー。わー。

▼信者達から大歓声が起こる。

シュバアッ!シュバアッ!

▼白い大蛇の首が振り下ろされる度に、
何匹もの鬼が消えた。
大蛇の口からは鬼の血がしたたり、
辺りの地面を、病院の外壁を、血に染めた。
それはまるで血を筆に含ませ、世界に文字を書いているように見えた。

【六条宮】
蟒蛇(うわばみ)め、
近くで見るとさすがに恐ろしい。

▼大蛇は辺りにめぼしい鬼がいなくなると、
餌食の鬼を求めて病院の敷地から出て行きはじめた。
それを見て白蛇教団の長、
吉川老人が信者に向かって叫んだ。

【吉川】
皆の衆。白蛇様が七十年の時を経てお目覚めになられた。
そしてたった今、我らをお救いになられたのだー。
南無大慈大覚白蛇大権現様のご降臨じゃー!
白蛇様のご威光をもって、今この現世にはびこりし悪鬼を祓っていただこうぞ。
今一度聞く。命を捨てる覚悟はあるかー!
ある者は続けー!
我らが囮となりて、鬼共を集めるのじゃー!
必ずや白蛇様が悪鬼共を一匹残らず祓ってくれようぞー!

【信者】
おおー!

【吉川】
女、子供は残れ。
我らが戻らぬ時は、次の世代に使命を繋げ。


▼京都の街を徘徊しはじめた白い大蛇。
その大きさはもう100メートルほどになっている。
その大蛇の後に白蛇教団の信者達がお経を唱えながら続く。
その様子はまるで世紀末の到来を告げるパレードのようだった。

南無大慈 大覚 白蛇大権現
南無大慈 大覚 白蛇大権現
南無大慈 大覚 白蛇大権現
南無大慈 大覚 白蛇大権現・・・・


2011/06/16 | ぷるるん戦士奮戦記【日本諸鬼】 | コメント(4) | トラックバック(0) | page top↑
イメージをちょっと描いてみました
拙作、ぷるるん戦士奮戦記「日本諸鬼」に
新キャラクターが登場したのでイメージをちょっと描いてみました。
このキャラクター達。実は以前みなさんから名前を募集したキャラです。
まさかこんな姿とは。とお思いの向きもいらっしゃいましょうが、
広い心でご容赦くださいませ。

今回描いた5人の高校生は、
5柱の龍の神様の化身で京都の裏鬼門を護っている設定です。
ちなみに主人公の女の子たちは京都の表鬼門を元気に護っております。
せっかく描いたのでよかったら見てやってくださいませ。



400gen.jpg
●辰巳玄(たつみげん)
これでも 17歳の高校生。 家では「おかあさん塾行くしパン代おくれ」とか言ってます。
命名してくださったのは猫乃鈴さまです。 ありがとうございました

400souta.jpg
●辰巳蒼太(たつみそうた)
辰巳五人衆の中では一番背が低くてちんまりしている。
丁寧な言葉づかい。かしこい。かわいいのでよく女装させられる。
植物を自在に操り得意技は毒殺。特技は薬の調合。
命名してくださったのは周子さまです。 ありがとうございました。

400akihiko.jpg
●辰巳秋彦(たつみあきひこ)
辰巳五人衆の中では一番体が大きく力持ち。豪放磊落。
金属を自在に操り巨大な鉄槌でなんでもかんでも破壊する。
甘いものが大好き。
命名してくださったのは小龍さまです。 ありがとうございました。

400kousuke.jpg
●辰巳紅介(たつみこうすけ)
火を自在に操る紅竜の化身。
合コンのメンツには居て欲しくないが、戦いのメンツには居てほしいこの人相。
味方でよかったと心から思える頼もしい存在。
成績は最低なれど松下幸之助や稲盛和夫、トルストイやニーチェなどを愛読している。
また、女の子にはまったくモテないが、お年寄りには優しく、
年配の女性には人気がある。
命名してくださったのはべあねこ18号さまです。 ありがとうございました。

400kouichi.jpg
●辰巳黄一(たつみこういち)
大地の波動を自在に操る黄竜の化身。
京都の鬼門の方角を護る、卯乃たちのいる修学院女子高校に対して、
京都の裏鬼門を護る吉祥院高校の生徒会長にして辰巳五人衆の首領。
心身ともにバランスのとれた優等生。
猿渡さんと抱き合っている所をみんなに見られ、
困ったなと思いつつも、ちょっと嬉しい17歳


さて、怠けながら、仕事や生活の合間を見ながら、
こつこつ創作続けてくぞいっ^^
2011/06/08 | ぷるるん戦士奮戦記【日本諸鬼】 | コメント(0) | トラックバック(0) | page top↑
第三十九話 わ、わた、わたしじゃありません。
【望月卯乃】
わ、わたし、ちがう。
なんにもしてない。
わ、わたわた、わたし、無実だよーーー!
ウ、ウサギさん。
弁護して、わたし犯人じゃないよね。

【ウサギ】
そうだな。

39_350.jpg

【鳥居翼】
お待たせ~。

▼その時、頭上から声がした。
ぷるるん戦士に変身した鳥居翼だった。

【猿渡花子】
翼、早っ。

【鳥居】
飛んできたからね。
わあ、風美~、生きてたんだ~。

【犬飼風美】
うん、心配かけたね。
それより翼、大変。
この大事件の犯人わかったよ。

【鳥居】
えっ?本当?誰なの?

【犬飼】
ある意味、尊敬ものよ。
なんと、望月さんが犯人でしたー!
ぱんぱかぱ~ん♪

【鳥居】
うそっ。
望月さん。あなたのせいだったの?
ぷるるん戦士的な力で?

【卯乃】
ちがう~ちがうよ~。

【猿渡】
さ、冗談はおいといて、
望月さん、達也君は?

【卯乃】
え?達也?
あれ?いない。
なんで?
え?まさか達也が犯人?

【猿渡】
この家でパソコンいじれそうなの、
達也君だけでしょ。
犯人かどうかわかんないけど、
話聞かんと。

【卯乃の父、武雄】
いや。わたしも一応店の売り上げ
パソコンで管理しとるけど。

【北大路警部】
お父さん、残念ながら最も容疑が高いのは達也君です。
これは捜査令状です。
失礼ながら、家の中を捜索させていただきますよ。
おい中村巡査。
君はここに待機して、
何かあったら本部に無線連絡。ええな。

【中村巡査】
はい。

【猿渡】
わたし達も行きます。

【北大路警部】
君たちはここにおんな。
達也君はもう、この前の先生みたいに、
バケモノになっとるかもしれへんのやで。


▼同行を止められて真剣な表情になる卯乃たち。
見つめあいながら猿渡が口火を切った。


【猿渡】 
みんな。

【全員】
うん。
プルルン、クプルプ、チャマヘス、バカム、変身。


▼卯乃、猿渡、犬飼が同時に変身の呪文を唱えた。
すると、輝く光と風の中から、美しいぷるるん戦士が現れた。
卯の化身の卯乃。
猿の化身の猿渡。
犬の化身の犬飼。
そして飛んで駆けつけた鳥居。
全員想いは同じだ。

【猿渡】
わたしたち、
正義の味方ぷるるん戦士ですよ。
お力になれます。

【北大路警部】
頼もしいな、ほんなたのむわ、助けてくれ。

【卯乃】
お父さん、おばあちゃん、
達也必ず連れて帰ってくるし、
待っとってね。

【武雄】
卯乃。

【卯女】
卯乃。まかせたで、望月の女の強さ。
見せてくれ。

【卯乃】
うん。
警部さん、達也の部屋は2階の奥です。

【北大路警部】
よし行こう。


▼北大路警部を先頭に卯乃達は家の中へ入っていった。
▼一方、辰巳の五竜たちは、比叡山の封印を破って
京都の街中に出現した無数の鬼と激しい空中戦を演じていた。

▼竜の化身辰巳五竜が一人、辰巳 玄(たつみげん)
は黒竜を操る。
黒竜は水脈を司り水を武器にする。

玄の操る黒竜に、無数の鬼が襲いかかってきた。
その鬼の姿、さしずめ人ほどもある巨大な蚊。
迎え撃つは、いかめしい漆黒の竜にまたがる玄。
長大な長刀をふりかざす。
あまりに長く、あまりに鋭いその刃は、
激しい水流によるものだ。

一振りすれば、たちまち数十の鬼が墜落してゆく。
鬼の血と水の刃のしぶきを浴びて、
月光がその姿を照らす。

▼辰巳五竜が一人、辰巳蒼太(たつみそうた)
は青竜を操る。
青竜は木脈を司り植物を武器にする。

巧みに青竜を操る蒼太。
無数に散らばる鬼の大軍を、
引き付けては引き離し、
引き離しては引き付けて、
縦横無尽に飛び回る。

気がつけば、天空いっぱいに散らばっていた鬼の大軍が
夏の蚊柱のように一つの群れになっていた。

▼そこへ地上から駆けつけた赤竜。辰巳紅介
たつみこうすけ

赤竜は火脈を司り火を自在に操るまさにドラゴン。
好戦的に輝く赤い瞳。
荒ぶる息はすでに炎をちらつかせている。

千載一遇の好機。
赤竜は、青竜が作り出した鬼の蚊柱にむかって、
下から一気に火炎を吐き出した。

轟く炎の轟音。灼熱の風。
その業火に焼かれる鬼の軍団は、阿鼻叫喚の渦となった。
黒い煙の尾を引きながら、
次々地上へ墜落してゆく鬼。

▼これら無数の鬼を生み出すは、
後ろに控える子鬼。
子鬼とはいえ、その体格はおよそ10メートル。
雑魚の鬼とは段違いのまさに強敵。

▼それに挑むは、辰巳五竜が一人、白竜を操る辰巳秋彦(たつみあきひこ)。
五人の中で最も躰が大きな秋彦。
その大きな躰にしても不釣合いに巨大な鉄槌を持つ。
白竜は金脈を司り、金属を自在に操る竜だ。
重厚長大な鉄槌も秋彦が持てば体の一部にすぎない。

雄叫びを上げて子鬼にその鉄槌を振り下ろす秋彦。
しかし巨大な子鬼は以外に素早く、秋彦の鉄槌を軽くかわした。
それに比べ、大きな動作で戦う秋彦と白竜に、
子鬼が生み出した無数の蚊のような幻鬼が襲い掛かる。
瞬く間に全身から出血をする白竜と秋彦。
それでもなお、恐ろしい形相で子鬼を睨む秋彦。
まとわりつく幻鬼にかまわず次の一撃を繰り出すべく体勢を立て直す。

▼そこへ辰巳五竜の首領、黄竜の使い手、辰巳黄一(たつみこういち)が現れた。
黄竜は地脈を司り、大地の波動を自在に操る。
黄一は黄竜の上に立ち上がり両手をかざした。
黄一に襲い掛かる無数の幻鬼。しかし黄竜の素早い動きについてゆけない。

黄一が、そのかざした手の向こうに巨大な子鬼を捉えた。

【黄一】
テ・ペヨ・ヴォーター

▼黄一が渾身の声量でそう叫ぶと一瞬視界が揺れた。
そしてその手から放たれた強力な大地の波動が一気に子鬼にぶつかった。

重厚な装甲のような子鬼の体にヒビが入り、
その動きが一瞬静止した。
その瞬間、白竜にまたがった秋彦が巨大な鉄槌を振り下ろす。

【秋彦】
いやぁっ!

ドガアァァン!

▼砕け散る子鬼。
それと同時にその空間一帯を支配していた幻鬼が、
まさに幻のごとくに消えた。

しかしそれは侵入してきた鬼の一部にすぎない。
すぐさま別の子鬼が繰り出す無数の幻鬼が、
次々と打ち寄せる怒涛の波のように辰巳五竜に襲い掛かってきた。
撃ち漏らした鬼たちは京都の町を空襲している。
地上を侵攻している鬼は空中の鬼よりさらに数が多い。

逃げ惑う京都の街の人々。
その中にも、落書き鬼に感染し、
燃え盛る街の中で一心不乱に落書きをする人々が少なからずいる。

【紅介】
雑魚ばっかだけど、数が半端じゃあねぇ

【蒼太】
とても地上の鬼までは手がまわりません。
鬼門にいる他の十二使徒を回してもらいませんか?

【玄】
辰巳本家のほうも心配だ。ここだけにかまっていられないぞ。

【秋彦】
黄一、ここは俺たちにまかせて助けを呼んできてんか。

【黄一】
いやだめだ。
どれだけこの街に犠牲が出たとしても、ここは俺たちだけでくい止める。
比叡山の結界を破って出てきたこいつらは、
今世間にはびこってる落書き鬼由来の鬼じゃない。
鬼門の戦力を割いて、もし鬼門が突破されたら、
世界が滅ぶ。

【蒼太】
確かに。こいつら鬼門の別動隊ってところでしょうね。

【紅介】
なんだよ。
鬼門戦争と落書き鬼事件が同時進行してるって事?
これ全部あの筋肉バカのスサノオが書いた筋書きかよ。
できすぎじゃね?

【秋彦】
偶然じゃろ。

【黄一】
たぶんな。落書き鬼事件に便乗したんだと思う。
或いはアマテラスの奸計かもな。

【紅介】
ハァ~。あっちの神様は単純でいいね。
こっちの神様はどこまで俺たちの事考えてくれてんだか。

▼戦いながら会話を続ける辰巳五竜の戦士。
徐々に深手を負い始めた。

【黄一】
とにかくみんな、辰巳五竜の初陣を華々しく飾ろうぜ。
絶対みんな生き残って、神様たちに人間のしぶとさを見せつけてやろう。

【全員】
おう!


▼まさに雲霞のごとく押し寄せる鬼の軍団。
迎え撃つは5人の竜の戦士。
あちこちで火の手の上る京の街からは黒い煙が立ち上る。
晴れ渡っていた月夜はその煙で覆われ、
炎の照り返しを受けて不気味に赤く染まっていた。
2011/06/07 | ぷるるん戦士奮戦記【日本諸鬼】 | コメント(2) | トラックバック(0) | page top↑
ぷるるん戦士奮戦記「日本諸鬼」 第三十八話:犯人は誰だ
▼卯女と犬飼が突然姿を消して2日目の夜。
望月家を訪ねてきたのは竜の化身の一人、辰巳黄一だった。
今や日本中に広がってしまった落書き鬼に対応するため、
卯乃達の修学院女子高校と辰巳達の吉祥院高校とが
力を合わせて戦うことを告げに来たのだが、
応対に出た猿渡と話していた玄関先に灼熱の鬼弾が着弾した。
思わず猿渡をかばい抱きしめてしまった黄一。
しっかり抱き合っている二人を目の当たりにしてしまった。
猿渡の母と望月家の人々。
猿渡と黄一は頬を真っ赤に染めていた。

▼そんな嬉し恥ずかしい空気が支配している望月家の玄関に、
黄一と共に望月家を訪れ、外で待っていた
同じく竜の化身である辰巳紅介(たつみこうすけ)が、
慌てて入ってきた。


(紅介)
おい黄一。いつまでのんきに女の子としゃべってんだよ。

(黄一)
お、おお、おう、紅介。
今の鬼弾だよな、まさか。

(紅介)
そのまさかじゃねえの?
ここ200年ほど破られたことのなかった鬼門が破られたんだよ。
鬼の奴ら、俺たち竜の一族が鬼門の最終防衛線を離れることを見越して
伏兵を潜ませてたんだぜ。

(黄一)
どれだけの鬼が入り込んだんだろう?

(紅介)
知んね。
見たとこザコの飛行鬼だけみたいだけど
鬼弾を撃てるって事は、小鬼くらいは入ってきたんじゃね?
とにかく、まちなかの落書き鬼よりこっちが優先だぜ。

(黄一)
玄(げん)と秋彦(あきひこ)と蒼太(そうた)は?

(紅介)
もう上で戦ってる。

▼そう言われて玄関を出て上空に目を凝らす黄一。
その鬼と龍のあからさまな戦いに、
思わず目を疑った。

(黄一)
うわあ、市民にバレバレじゃないか。

(紅介)
しかたねぇじゃん。
鬼が攻めてきたんだからよ。

▼外へ飛び出した黄一を追って、
家の中にいた全員が外に出て上空を見上げた。
そこには無数の翼を持った鬼と、その鬼と戦う3匹の竜がいた。

(卯乃)
うわぁ、あのヘビみたいなの竜?
辰巳さんのお仲間?
かっこいい。
あっ、猿渡さんほら、あそこ見て、あそこ。
あの龍に乗ってるの辰巳さんのお仲間なんだって。
かっこいいね。

▼気楽な卯乃とは対照的に、上空を見つめ表情を曇らせる猿渡。
慌てて携帯電話を取り出した。

(猿渡)
大変。翼に電話する。

▼卯乃の家のある修学院という地区はちょうど比叡山のふもとにあたる。
少し小高くなっており、京都の市街が一望できた。
暗雲たちこめる上空では無数の鬼と戦う龍の戦士。
市街地では、あちこちで火の手が上がっているようだ。

(卯乃の父、武雄)
なんてこった。
こんな時に、母さんがいてくれたら。

▼そこへ京都府警察簿本部のパトカーがサイレンを鳴らしてやってきた。
パトカーは卯乃の家の前で停まった。
助手席のドアが開き、最初に降りてきたのは北大路警部。

(北大路警部)
こんばんわ。
先日はお世話になりました。
京都府警察本部の北大路です。

(武雄)
あ、これはこれは。

(卯女)
よっこらしょ。

(卯乃)
あ、おばあちゃーん。

(犬飼風美)
はーい。

(猿渡)
あっ、風美ー!

(卯乃)
犬飼さーん。

▼なんと、パトカーの後部座席から降りてきたのは卯女と犬飼。
二人に駆け寄る卯乃と猿渡。

(猿渡)
風美ーっ心配してたのよー。

(犬飼)
ごめんなさい花さん。
わたしも会いたかったよー、ほんと久しぶりっ。
2ヶ月ぶりくらいかなぁ。

(猿渡)
2ヶ月?

▼二人の会話を聞いて笑う卯女。

(卯女)
はは、今回の怪我はちょっと深手やったから
ちょっと治すんに時間かかってしもたけど、
おかげで誰も死なんですんだわ。

(ヘロ)
きゃんきゃん。

(卯乃)
わぁ、かわいい子犬。
この子ヘロ?

(犬飼)
そう。
おっきいとみんな驚くでしょ。
それにこの姿だと普通の人には見えないみたいだし。

(猿渡)
死んじゃいそうだったのに、
ほんと、よかったね。
記憶も消えてないみたいだね。

(犬飼)
うん。ヘロはほんとよくがんばったよ。
何度も、もうだめってなったもんね。

(ヘロ)
きゃんきゃん^^

(武雄)
でも母さん、どこ行ってたんや。

(卯女)
悪かったな。
時間の流れのすごい早い心世界の人がおってな。
その人の心の中で養生してたんや。
あっちでは2ヶ月くらい経ったんやけど、
こっちではどうや、1日くらいか?

▼その時卯乃達のそばに上空の鬼の放った鬼弾が着弾した。

ドパーーーン!

(全員)
うわあっ。

(卯女)
こらゆっくり説明しとられへんな。

▼さらに次々卯乃達の近くに着弾する鬼弾。

ドパーーン!
ドーーン、ドドーーーン!

(紅介)
黄一、あいつらここ狙ってるぞ。

(黄一)
よし紅介。俺たちも上がって戦う。

(卯女)
黄一君って辰巳黄一君かいな。
おっきいなったなぁ。

(黄一)
あ、はじめまして、辰巳黄一です。
以前お会いしましたか?

(卯女)
あんたがまだ赤ん坊の時にな。
鬼門が破られたみたいやな。
あいつらの狙いは、昔も今も
鬼の尻こ玉を浄化する、うちらの御神体や。
あんたらの家のも危ないで。

(黄一)
わかりました。対応します。
紅介、行くぞ!
プルルン・クプルプ・チャマヘス・バカム、変身!

ズバウウッ!

(紅介)
プルルン・クプルプ・チャマヘス・バカム、変身!

ズバウウッ!

▼呪文によってまきおこる閃光と暴風。
その中から15メートルほどの2匹の竜と、
勇壮な甲冑に身を包んだ2人の戦士が現れた。
ぷるるん戦士に変身した黄一たちとその使いの竜たちだ。

(猿渡)
黄一君。かっこいい。

(卯乃)
ねぇねぇ犬飼さん。猿渡さん、黄一君だって・・・。

(風美)
えっ?何々?黄一君って誰?花さんの彼氏?

(黄一)
紅介っ、続けーーーっ!

(紅介)
おーっ!

▼2人はそう叫ぶとそれぞれの竜にまたがって戦いの空へ舞い上がって行った。

38f454.jpg

(卯女)
警部さん、送ってくれておおきに、
もう帰ってええで。

(北大路警部)
いえ、そうはまいりません。
超常現象を目の当たりにし続け、
すっかりみなさんのペースですが、
わたくしも職務をまっとうしなければなりません。
京都府警察本部の捜査によりますと、
一連の落書き事件には、
インターネットを使ってお膳立てした人物がいる事がわかりました。
上終先生が学校に落書きをした時に大量のスプレーを用意した人物。
各商店街の落書き暴動の時に、大量のペンキを用意した人物。
様々なルート、様々な方法を使ってますが、
最終的に一つのIPアドレスにたどり着きました。

(卯乃)
猿渡さん、IPアドレスってなに?

(猿渡)
黙って聞いてなさい。

(北大路)
ほとんどの犯行に一つのパソコンが関与していたと言うことです。

(卯乃)
はあ。

(北大路)
それは、こちらの望月さんのご自宅のパソコンです。

(猿渡)
ええーーーっ?

(卯乃)
なになに?
猿渡さん、なにがえーーーなの?

(猿渡)
あんたが犯人。




(卯乃)
うそっ!


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前回募集しました、竜の一族辰巳5人衆の名前募集に
多数のご応募をいただきありがとうございました。
この場を借りまして採用されたお名前を発表させていただきます。

赤竜の使い手:辰巳紅介(たつみこうすけ)、名付け親:べあねこ18号さま
青竜の使い手:辰巳蒼太(たつみそうた)、名付け親:周子さま
白竜の使い手:辰巳秋彦(たつみあきひこ)、名付け親:小龍さま
黒竜の使い手:辰巳 玄(たつみげん)、名付け親:猫乃 鈴さま

以上の4人の方のお名前を採用させていただきました。
採用されなかった方、せっかく考えてくださったのにごめんなさい。
愛してます。

採用された方には、
そのうち、ナカノ先生直筆サイン入りjpg画像をお贈りさせていただきます。

みなさん、ほんとうにありがとうございました。
これからも宜しくお願い申し上げます。
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●お好み焼き慈恩弘国のご予約はこちらまで
info@ms-06zaku.com

  予約フォーマット
  (18:00から19:30分くらいまでに入国)
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  代表者名(偽名可):
  携帯など連絡先:
  質問、希望など:
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●2011年1月の営業日(後述の日以外は営業しておりません)
営業時間/18:00開店、22:30ラストオーダー、23:00閉店

~休み~、~休み~、09日(日)
14日(金)、15日(土)、16日(日)
21日(金)、22日(土)、23日(日、昼夜)
28日(金)、29日(土)、30日(日)

★23日は月に一度の昼営業もします。
フラウボウ9号プロデュース、ケーキバイキング。
費用:お一人2000円の予定。
時間:朝11時~昼2時まで←準備のためいつもより1時間遅いです。
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2011/01/13 | ぷるるん戦士奮戦記【日本諸鬼】 | コメント(17) | トラックバック(0) | page top↑
ぷるるん戦士奮戦記「日本諸鬼」 第三十七話:男子登場
▼卯女と犬飼が病院からいなくなった翌日、朝から方々を探したが
その行方はいっこうにわからなかった。
▼京都に端を発し、今や関西一円から全国の都市に飛び火した落書き事件は、
徐々に社会の機能をうばっていった。
落書き鬼に感染した人間は、その発作がおこると人が変わったように仕事を放棄して
突然落書きを始めるのである。
医師、警察官、主婦、老若男女それは誰におこっても不思議ではなくなっていた。
▼突発性落書き症候群。そんな病名まで取り沙汰されていた。
▼夜になって望月家では、猿渡親子と卯乃達が夕食をとっていた。


(卯乃)
おばあちゃんたち、
けっきょく見つからなかったね。

(卯乃の父武雄)
そうやなぁ。
明日も探してみよか。
警察からもなんの連絡もないし、
まあ、世の中がこんだけ騒然となっとったら
行方不明者の捜索なんて後回しやろしなぁ。
でも、それだけ落書き鬼が蔓延しとるいうこっちゃ、
外出するんも考えなあかんなぁ。
猿渡さん、花子さん。
卯乃、達也。
おまえらも大した用事がなかったら外に出るなよ。

(猿渡の母葉子)
望月さん。
でもこの先どうなるんでしょう。
日本人、いえ、人類全てが鬼になってしまうんでしょうか。

(武雄)
このままですと、そうなりますねぇ。

(葉子)
人類滅亡ですか?

(武雄)
いえ、そうはならないでしょう。
鬼は所詮人間の寄生生物です。
宿主の人間がいなければ生きていけません。
・・・ただ。

(葉子)
ただなんです?

(武雄)
戦争になります。

(葉子)
戦争?

(武雄)
そうです。
19世紀の終わりごろから、交通手段の発達で、
それまで世界各地で地域的に増殖と減少を繰り返してきた鬼が、
度々世界的に蔓延することがありました。
そして、何度目かの世界的蔓延を迎えたとき、
ついに人類未曾有の大規模な世界戦争が勃発したのです。
世界大戦です。

(葉子)
そんな、ただの落書きじゃないですか。

(武雄)
問題は落書きそのものではありません。
鬼の数が増えているという点にあります。
鬼が蔓延すると、
社会の機能がじょじょに滞りはじめ、
不穏な空気が漂い、
最後には、気化したガソリンに一気に火がつくように
ナショナリズムが爆発し、戦争に突入するのです。
このときの人間は、もう正気ではありません。
昨日まで仲良くしていた隣人とさえ殺し合いをはじめます。
そうなってしまったら、もう手立ては無く、
鬼の勢いがおさまるのを待つほかないのです。
その時間は数年でおさまる事もあれば、
百年続く事もあります。

(葉子)
一体、私たちは、どうすれば?

(武雄)
そうなる前になんとか今回大発生した落書き鬼の元凶の大鬼を
退治しなければならないのですが・・・。

(卯乃)
お父さん。
わたし、これ以上は嫌。
大鬼ってこの前の鬼みたいに強いんでしょ。
もうあんな怖いの嫌。

(武雄)
卯乃・・・。

(猿渡)
望月さん。
あんた何わがまま言ってんの。
今までのいきさつとか、
今の話とか、みんなわかって言ってんの?

(卯乃)
だって・・・。

(猿渡)
だいたい私がぷるるん戦士になっちゃったのは、
元々あなたの罠でしょ。
人を巻き込んでおいて何よ今さら。

(卯乃)
怖いものは、怖いんだもん。

(猿渡)
あきれたわね。
あなたには守りたい人とかいないの?

(武雄)
いないよなー。
お前みたいなしょぼい奴に、
命をかけて守りたい恋人とか、
想像もできねぇ。

(卯乃)
なによお父さんまで。
そういう猿渡さんには彼氏いるの?

(葉子)
おっと。それわたしも聞きたい。
ねえ花子。あんたどうなのよ。

▼顔を真っ赤にする猿渡。

(猿渡)
えっ?どうって・・・。その・・・。

(葉子)
彼氏、いるの?いないの?

(猿渡)
ええ?なんでわたしが窮地に?


ピンポーン。

▼そのとき突然玄関のチャイムが鳴った。

(猿渡)
私出ます。

▼渡りに船。食卓を離れる猿渡。
ちょっと残念そうな顔をする母。

(葉子)
ちっ!

(猿渡)
はーい。

▼猿渡が玄関の戸を開けるとブレザー姿の
清風ただよう青年が一人立っていた。

(猿渡)
どなたですか?

(青年)
はじめまして、わたくし吉祥院高校の生徒会長。
辰巳黄一(たつみこういち)と申します。
こちらに修学院女子高校生徒会長の
猿渡さんがいらっしゃると聞きまして。

(猿渡)
修女の猿渡はわたくしですが、
生徒会長ではありません。
うちの高校、生徒会が無いんです。

(黄一)
あなたでしたか。
思った通りの素敵な方だ。
あらためて。辰巳です。

▼握手を求める黄一。
その手を握りちょっと照れる猿渡。

(猿渡)
ど、どうも。

(黄一)
今回みなさんが卯女さんに代わって初陣されたことは、
宮内省から聞いています。
ご苦労様でした。
今般の情勢を踏まえ。
本来、鬼門のしんがりを護る吉祥院の竜の一族も、
国内の鬼の平定に加勢することになりました。
つきましては、修学院女子高校の生徒会と、
我が吉祥院高校の生徒会の合同作戦が実行されます。
今日は作戦発動前に一度生徒会長の猿渡さんにお目にかかっておこうと思い
参上いたしました。
お見知り置きください。

(猿渡)
わざわざお越しいただき、ありがとうございます。
でもうち、生徒会無いし、
わたしただの学級委員長ですよ。

(黄一)
今、修学院女子高校は授業再開にむけて準備を整えているはずです。
開校されればあなたが生徒会長に就任されることになるでしょう。
まだご存じ無いかもしれませんが、
修学院は古来より強大な力をもつ集団でしたから、
平素は長を置かないしきたりなのです。
しかし今は非常事態。
我々神の化身が力をあわせて最後まで戦わなければなりません。
平和のために。

(猿渡)
ちょ、ちょっと待って。
じゃあ、あなたもぷるるん戦士なの?

(黄一)
ぷるるん?
あはっ。かわいい呼び名ですね。
そうか変身する時、ぷるるんって言いますもんね。
そうです。
わたしは東南東を護る神、パジュラの使徒が一人
黄竜の使い手、辰巳黄一です。

▼黄一と猿渡が玄関で話し込んでいると、
気になった卯乃が家の奥から出てきた。

(卯乃)
ねえねえ猿渡さん。
誰としゃべってんの?
うわっ。
彼氏だ。

(猿渡)
えっ?

▼卯乃が慌ててみんなを呼びに行った。

(卯乃)
お父さーん。
おばさーん。
達也も来て来てー!
猿渡さんがこんな時間に彼氏と会ってるよー!

▼それを聞いて出てくるみんな。

(葉子)
うそ?ほんと?

どたどたどた・・・。

(猿渡)
ち、ちがう、ちがう。
はは、なんか誤解されちゃって
ごめんなさい。

(黄一)
い、いえ、こちらこそ。

▼その時、家の前の道に灼熱の鬼弾が落ちてきた。

ヒュン!
ドパーーン!

(黄一)
危ないっ!

▼とっさに猿渡をかばって抱きしめる黄一

(猿渡)
きゃあ!

(武雄)
うわー!なんだー?

ズズズズズーーン!

▼やがて爆音と閃光、土煙がおさまった望月家の玄関。
全員が集合しているその目の前で、
猿渡と黄一がしっかりと抱き合っていた。

(卯乃)
うわーっ!ラブラブー!

(猿渡)
えっ?

(黄一)
あっ、ご、ごめんなさい。
ついとっさに。

37bp454.jpg

▼急いで離れる猿渡と黄一。

(卯乃)
なんでー?なんでいっつも猿渡さんばっかりなの?

(卯乃の弟達也)
花子ねえちゃん、綺麗だし料理上手いし、勉強できるし。

(葉子)
花子。やるじゃん。
はじめまして、わたし花子の母です。

(黄一)
は、はじめまして、
ぼ、僕、吉祥院高校の辰巳黄一と申します。
花子さんとはその・・・。

(葉子)
いいのいいの。
私こう見えて理解のある親だと思うわ。
でも避妊はちゃんとしてね。

(黄一)
ええー?
ひ、避妊って?

(猿渡)
ち、ちょっとお母さん何言ってんのよー!
もーーいやーーー!




次回をお楽しみに~(^-^)/




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●お好み焼き慈恩弘国のご予約はこちらまで
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  予約フォーマット
  (18:00から19:30分くらいまでに入国)
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  入国希望日:
  入国時間:
  入国人数:
  代表者名(偽名可):
  携帯など連絡先:
  質問、希望など:
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●2010年10月の営業日
営業時間/18:00開店、22:30ラストオーダー、23:00閉店

01日(金)、02日(土)、03日(日)
08日(金)、休み(スタッフ不足のため)、休み(区民運動会のため)
15日(金)、16日(土)、17日(日)
22日(金)、23日(土)、24日(日)
29日(金)、30日(土)、31日(日)

24日は月に一度の昼営業もします。
メニューは基本、量産型ザクカレー800円のみ、
カレー以外は、できるものならなんでも出すってのが経営方針。
10:00~14:00
-----------------------------------------------------

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┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
            ◆ フラウボウ募集  ◆
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
我が国の次代を担うフラウボウを募集しております。
●資 格:二十歳以上の女性。
      金、土、日、のいずれか出勤できる方。特に土日。
      連邦軍女子制服(約9号サイズ)を
      人前で平気で着られる方。
●勤務地:京都市南区東寺の南西角付近、お好み焼き慈恩弘国
●交 通:近鉄東寺駅徒歩10分、市バス東寺南門前徒歩5分
      近鉄東寺駅はJR京都駅(近鉄京都駅)から駅1つです。
●勤務時間:夕方5時出勤、夜10時30分から11時30分退勤
●待 遇:南極条約に基づき優遇、時給850円、交通費1日500円支給
●任 務:お水を出したり、ウィンナー焼いたり、
      世界征服の片棒かつがされたり、
      アホな事を言わされたり、いろいろ。
●その他:シフト制、学業・本業を優先してください。
      連邦軍女子制服支給。まかない有。
●募集人数:若干名
●お問い合わせ→info@ms-06zaku.com
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●今日の寄贈品
このコーナーでは、
帰国したジオン国民からいただいた寄贈品を
適当に選んでご紹介いたします。

101018贈答セット

これは現在ツイマッド北海道支社へ赴任中の
ご常連のMJさまの発案で開発した、
お好み焼き慈恩弘国贈答セットです。

ジオンの紋章の刻印された豪華な桐の箱に、
赤鼻畑牧場の生キャラメルと、
らあず様から寄贈された、
わたしの写真などがプリントされた、
お好み焼き慈恩弘国オリジナルチロルチョコが
納められています。

生キャラメルもチロルチョコも現在品切れ中ですが、
お歳暮のシーズンまでには、
せめて生キャラメルだけでも店頭に並べて、
ジオン人から、お世話になった連邦の方への贈り物として
ご利用いただきたいと思っている。
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☆★ジオン領拡大作戦進行中☆★

20100606zeon

お好み焼き慈恩弘国店舗にてお配りしております、
この「ジオン領宣言シール」を
あなたの所有物に貼って、
ジオンの地球侵略に手を貸そう!

ただし、他人のもの、公共のものには
決して貼らないでください。
連邦軍につけいる好機をあたえ、
戦局が不利になってしまいます。

自分のできる範囲で、
できるだけ人に迷惑をかけない独立闘争こそ、
我らの理想である。

ジーク・ジオン。
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お好み焼き「慈恩弘国」
http://www.ms-06zaku.com/

お好み焼き「慈恩弘国」mixiコミュ(登録=国民)
http://mixi.jp/view_community.pl?id=2975500
2010/10/18 | ぷるるん戦士奮戦記【日本諸鬼】 | コメント(19) | トラックバック(0) | page top↑