このブログは私、中野新一が、ランバ・ラルを名乗り、彼が生きていて、現在の日本で生活していたらどんな事が起こるのか。その社会実験的試みの記録です。
わたしの名はランバラル。
数知れぬ死線をくぐり抜けてきた
ジオン公国の元軍人だ。
宇宙世紀009 2月24日 雨のち曇り
先日雨の中、
我が国の近所をぶらぶらしていると、
小さなヘアーサロンを見つけた。
店の名前は、Bifrost(ビフロスト)。
http://homepage3.nifty.com/bifrost/
町家を利用したそのヘアーサロンは、
間口が3メートルほどで、
モダンすぎず、また古すぎず、
ほどよい加減のたたずまいの店だ。
興味本位に中を覗いてみると、
ガラスのドア越しに
店の主人が電話をしているのが見えた。
わたしはこの主人の顔を知っている。
氏は、我がお好み焼き慈恩弘国に、
時々帰国してくれる
熱心な国民だった。
熱心なのに、
時々しか帰国しないのは、
奥方様が、非常に無関心だからだということだった。
そのため、
奥方様が実家へ帰るなど、
留守のときを見計って、
息子さんと一緒に来てくれるのだった。
氏がヘアーサロンを経営していることは知っていた。
しかし、いくら場所を教えてもらっても、
わたしは、たどり着けたためしが無かった。
このところの忙しさで、
もう何ヶ月も散髪をしていない。
ちょうどよい機会なので、
わたしは、氏に頭を刈ってもらう事にした。
「やっと見つけましたよ。」
そういって店のドアを開けると、
「これはこれは、ようこそどうぞ奥へ。」
といって主人がむかえてくれた。
店のなかには、
犬がいた。
わたしは犬が大好きなので、
楽しい気持ちになった。
我が国では、
もしお客さまの皿に犬の毛が入ったりしたらと思うと、
恐くてとても飼えない
その点、
ここはヘアーサロンなのだ。
多少犬の毛が床に落ちてても、
それ以上に人間の毛が落ちてくるので、
問題ない訳である。
うらやましい稼業だ。
店には、女性の先客が一人いた。
女性は、別のスタッフに洗髪をしてもらっていた。
わたしもその隣の洗髪台へ案内された。
椅子が背中側に倒され、
仰向けで頭を洗ってもらった。
思えば、
わたしは散髪屋さんにしか行った事がなかったので、
こんな姿勢で頭を洗ってもらうのは初めての経験だ。
背筋がのびて、なんだか気持ちがいい。
洗髪が終わると、
鏡の前の席に案内された。
主人が、
「よく来てくださいました。
どのようにいたしましょう。」
と聞いてきた。
わたしは、
「ランバラルで。」
とリクエストした。
主人は嬉しそうだった。
一般的にわたしのイメージといえば、
30年前の戦時中の姿だ。
遠くからやってくる同胞の為にも、
そのイメージを少しでも壊さない事は大切である。
ここから、主人とわたしの、
試行錯誤の楽しい散髪がはじまった。
「一年戦争の時は誰が散髪してくれてたのですか?」と、主人。
「クランプだ。あいつは見かけによらず手先が器用で、
部隊の連中の頭は全部あいつが刈っていた。
ハモンだけは嫌がっていたがな。」
「そうでしたか。」
「耳は出ていたと思うぞ。」
「いえ、このくらい長めで後ろへ流したら
ちょうどよいと思います。
ほら、こんな感じで。」
「おお。」
「後ろは、最初はこんな感じかと思います。」
「当時の写真を見ると、
私の顔を前から見ても耳の下のあたりから、
後ろの髪が出ていたと思うが。」
「おそらく戦場で頻繁に散髪できなかったので、
のび放題になってたと思います。
最初はこんな感じで整ってたはずですよ。
ここはすぐのびてあんな感じになりますよ。」
「そうだったのか。
クランプめ、ちゃんと仕事してやがったんだな。」
「ランバラルさんはくせ毛ですね。」
「そうなのだ。当時の髪型を再現するのは難しいかね。」
「いえ、このクセがあの独特のヘアースタイルの原因です。
このクセを利用しないと、
あんな感じのボリュームのあるオールバックには
なりにくいのです。」
「オールバックといえば、
散髪はクランプに任せていたので、
わたしは当時どんな整髪料を使っていたのか覚えていない。
あのヘアースタイルを形作っている整髪料はなんだと思うか。」
「オールバックですが、ボリュームがありますので、
ポマードではないでしょう。
おそらくジェルだと思います。
硬さは、ミディアムかソフト。」
「そうなのか。実は自分でも再現してみようと思って
いろいろためしたが、
いつも硬めの整髪料を選んでいた。」
「あのスタイルは、硬めではだめです。
しかも、頻繁に多く使っていたはずですので、
ドンキホーテあたりで買った
安い大きな容器のものだと思います。」
「そうだったのか。
クランプめ、わしの頭のために、
わざわざドンキまで行って安く済ませていたのか。
おまえが部隊のお金を、
そうやって節約してくれてたのに、
わしはすぐに大盤振る舞いをしてしまった。
申し訳なかったなぁ。」
「こんな感じでどうでしょう。」
「おおー。いいじゃないか。
うむ。気に入りました。」
「2階でヘッドスパもやってますので、
お時間のあるときにでもご利用ください。」
ヘッドスパ?
頭温泉?
なんだかわからないが、
このところの寒い時代に魅力的な感じがする。
「わかった。
今度はハモンも連れてくるので、
その時にはぜひ。」
ここの主人は話がわかる。
この調子なら、
ハマーン・カーンにしてくれ、とか
クワトロ・バジーナで。
などと希望を言えば、
どうにかしてくれそうだ。
そんないきさつで、
こんな頭になった。
どうだ。
少しは男前が上がったか。

--------------------------------------------------
本日のクルー
店長:ランバラル大尉、
--------------------------------------------------
お好み焼き「慈恩弘国」
http://www.ms-06zaku.com/
お好み焼き「慈恩弘国」コミュ(登録=国民)
http://mixi.jp/view_community.pl?id=2975500
--------------------------------------------------
☆★ジオン領拡大作戦進行中☆★

お好み焼き慈恩弘国店舗にてお配りしております、
この「ジオン領宣言シール」を
あなたの所有物に貼って、
ジオンの地球侵略に手を貸そう!
ただし、他人のもの、公共のものには
決して貼らないでください。
連邦軍につけいる好機をあたえ、
戦局が不利になってしまいます。
自分のできる範囲で、
できるだけ人に迷惑をかけない独立闘争こそ、
我らの理想である。
ジーク・ジオン。
--------------------------------------------------
数知れぬ死線をくぐり抜けてきた
ジオン公国の元軍人だ。
宇宙世紀009 2月24日 雨のち曇り
先日雨の中、
我が国の近所をぶらぶらしていると、
小さなヘアーサロンを見つけた。
店の名前は、Bifrost(ビフロスト)。
http://homepage3.nifty.com/bifrost/
町家を利用したそのヘアーサロンは、
間口が3メートルほどで、
モダンすぎず、また古すぎず、
ほどよい加減のたたずまいの店だ。
興味本位に中を覗いてみると、
ガラスのドア越しに
店の主人が電話をしているのが見えた。
わたしはこの主人の顔を知っている。
氏は、我がお好み焼き慈恩弘国に、
時々帰国してくれる
熱心な国民だった。
熱心なのに、
時々しか帰国しないのは、
奥方様が、非常に無関心だからだということだった。
そのため、
奥方様が実家へ帰るなど、
留守のときを見計って、
息子さんと一緒に来てくれるのだった。
氏がヘアーサロンを経営していることは知っていた。
しかし、いくら場所を教えてもらっても、
わたしは、たどり着けたためしが無かった。
このところの忙しさで、
もう何ヶ月も散髪をしていない。
ちょうどよい機会なので、
わたしは、氏に頭を刈ってもらう事にした。
「やっと見つけましたよ。」
そういって店のドアを開けると、
「これはこれは、ようこそどうぞ奥へ。」
といって主人がむかえてくれた。
店のなかには、
犬がいた。
わたしは犬が大好きなので、
楽しい気持ちになった。
我が国では、
もしお客さまの皿に犬の毛が入ったりしたらと思うと、
恐くてとても飼えない
その点、
ここはヘアーサロンなのだ。
多少犬の毛が床に落ちてても、
それ以上に人間の毛が落ちてくるので、
問題ない訳である。
うらやましい稼業だ。
店には、女性の先客が一人いた。
女性は、別のスタッフに洗髪をしてもらっていた。
わたしもその隣の洗髪台へ案内された。
椅子が背中側に倒され、
仰向けで頭を洗ってもらった。
思えば、
わたしは散髪屋さんにしか行った事がなかったので、
こんな姿勢で頭を洗ってもらうのは初めての経験だ。
背筋がのびて、なんだか気持ちがいい。
洗髪が終わると、
鏡の前の席に案内された。
主人が、
「よく来てくださいました。
どのようにいたしましょう。」
と聞いてきた。
わたしは、
「ランバラルで。」
とリクエストした。
主人は嬉しそうだった。
一般的にわたしのイメージといえば、
30年前の戦時中の姿だ。
遠くからやってくる同胞の為にも、
そのイメージを少しでも壊さない事は大切である。
ここから、主人とわたしの、
試行錯誤の楽しい散髪がはじまった。
「一年戦争の時は誰が散髪してくれてたのですか?」と、主人。
「クランプだ。あいつは見かけによらず手先が器用で、
部隊の連中の頭は全部あいつが刈っていた。
ハモンだけは嫌がっていたがな。」
「そうでしたか。」
「耳は出ていたと思うぞ。」
「いえ、このくらい長めで後ろへ流したら
ちょうどよいと思います。
ほら、こんな感じで。」
「おお。」
「後ろは、最初はこんな感じかと思います。」
「当時の写真を見ると、
私の顔を前から見ても耳の下のあたりから、
後ろの髪が出ていたと思うが。」
「おそらく戦場で頻繁に散髪できなかったので、
のび放題になってたと思います。
最初はこんな感じで整ってたはずですよ。
ここはすぐのびてあんな感じになりますよ。」
「そうだったのか。
クランプめ、ちゃんと仕事してやがったんだな。」
「ランバラルさんはくせ毛ですね。」
「そうなのだ。当時の髪型を再現するのは難しいかね。」
「いえ、このクセがあの独特のヘアースタイルの原因です。
このクセを利用しないと、
あんな感じのボリュームのあるオールバックには
なりにくいのです。」
「オールバックといえば、
散髪はクランプに任せていたので、
わたしは当時どんな整髪料を使っていたのか覚えていない。
あのヘアースタイルを形作っている整髪料はなんだと思うか。」
「オールバックですが、ボリュームがありますので、
ポマードではないでしょう。
おそらくジェルだと思います。
硬さは、ミディアムかソフト。」
「そうなのか。実は自分でも再現してみようと思って
いろいろためしたが、
いつも硬めの整髪料を選んでいた。」
「あのスタイルは、硬めではだめです。
しかも、頻繁に多く使っていたはずですので、
ドンキホーテあたりで買った
安い大きな容器のものだと思います。」
「そうだったのか。
クランプめ、わしの頭のために、
わざわざドンキまで行って安く済ませていたのか。
おまえが部隊のお金を、
そうやって節約してくれてたのに、
わしはすぐに大盤振る舞いをしてしまった。
申し訳なかったなぁ。」
「こんな感じでどうでしょう。」
「おおー。いいじゃないか。
うむ。気に入りました。」
「2階でヘッドスパもやってますので、
お時間のあるときにでもご利用ください。」
ヘッドスパ?
頭温泉?
なんだかわからないが、
このところの寒い時代に魅力的な感じがする。
「わかった。
今度はハモンも連れてくるので、
その時にはぜひ。」
ここの主人は話がわかる。
この調子なら、
ハマーン・カーンにしてくれ、とか
クワトロ・バジーナで。
などと希望を言えば、
どうにかしてくれそうだ。
そんないきさつで、
こんな頭になった。
どうだ。
少しは男前が上がったか。

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本日のクルー
店長:ランバラル大尉、
--------------------------------------------------
お好み焼き「慈恩弘国」
http://www.ms-06zaku.com/
お好み焼き「慈恩弘国」コミュ(登録=国民)
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ただし、他人のもの、公共のものには
決して貼らないでください。
連邦軍につけいる好機をあたえ、
戦局が不利になってしまいます。
自分のできる範囲で、
できるだけ人に迷惑をかけない独立闘争こそ、
我らの理想である。
ジーク・ジオン。
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わたしの名はランバラル。
数知れぬ死線をくぐり抜けてきた
ジオン公国の元軍人だ。
宇宙世紀009 2月14日晴れ
今日は久しぶりに忙しい営業となった。
2月に入って以来の暇な日々は、
いったいなんだったのか。
先週、フラウボウ達と、営業時間中の店内で
ギターやらアコーディオンを弾いて
海のトリトンを熱唱していたのが
遠い日の記憶のようである。
昨晩は、
開店直後から、たくさんの同胞が帰国を果たし、
小さな店はすぐに満席になった。
遠くは、東京、三重、静岡からも同胞が訪れ、
ジークジオンの大唱和で、
心を一つにした。
楽しい、夢のような一夜であった。
そんな盛況ぶりは、
数字にも表れていた。
先週は週末の営業日3日間をとおして、
平均して1日2、3万の売上げだった。
昨日は一晩で、
8万円を超えた。
先週3日ぶんの売上げを、
1日で超えたのだ。
そんな盛況を支えてくれた、
捕虜のフラウボウたちのがんばりも評価したい。
昨晩のフラウボウは、
3号と6号が任務にあたってくれた。
メガネっコの3号は、
お調子者でとても愛嬌があり、
店を明るくしてくれる。
3号にしか作れない、
必殺技のジャブローの水カクテルも、
久しぶりにくりだしていた。
アゴピアスでライダー。
茶髪のフラウボウ6号は、
とても若いのに、1年戦争に詳しく
訪れた同胞との話題に事欠かない。
6号が料理をお運びした先のテーブルでは、
よく笑いが起こっている。
なにかしら、同胞のツボにはまる事を
言っているのかもしれない。
しかし、6号をはじめて見た同胞は、
そのクールでやさぐれた感じの印象に、
「フラウボウ、お前の人生にいったい何があったんだい?」
と、思わず心配をしてしまうようであるが、
本人に言わせれば、
アムロに言われたとおり、
強い女のコになっただけ。のようである。
この3号と6号が、
よく連携してがんばってくれた。
いつもなら、
わたしが仕入れの時についでに買ってくるパンを
ちょっとつまんだり、
椅子に座って休む時間が少しはあるのだが、
昨晩は、営業開始時間から、
最後の同胞が出国するまで、
少しも休まず、動きっぱなしで、
元気に尽くしてくれた。
本当に、ありがとう。
思えば、
連邦の捕虜は、実によく尽くしてくれる。
それに比べ、私の部下のコズンときたらどうだ。
ホワイトベースの連中に捕虜にされた時、
先方は、南極条約にのっとって、
ちゃんと食事を与えてくれたり、
ちゃんと椅子に座らせて尋問してくれたのに、
牢屋のドアは爆破するわ、
通信室を占領して、
勝手に先方の機密情報を漏洩(ろうえい)するわ、
あげくのはてには、
わたしが命をかけてお守りした
アルテイシア様にタックルまでしおって、
恥ずかしいやつめ。
だいいち、一番恥ずかしいのは、
お前のせいで、いまだにわたしは、
「ランバラルさんといえば、
あの、うかつな仲間達の隊長さんですよね。」と、
うかつ団体の頭目よばわりされていることだ。
おい、コズン。
今もどこかで生きていて、
このブログを読んでいるなら、
反省して一報をよこせ。
これでもわたしは、お前たちのことを、
ずっと気にかけているのだ。
元気ならば、いや命令だ。
元気でいろ。
そしてわたしにその懐かしい顔をみせろ。
昔の事は怒ってないから。な、いいな。
最後の同胞が出国したのは、
閉店時間の11時を少しすぎたころであった。
ちょうど、BGMのMDが最後の曲を流し終えて
音楽が止まった。
さっきまでの賑やかさが嘘のように、
店を静けさが支配していた。
3号が、この静けさの違和感を口にした。
「時間どうりに店が終わった。おかしい感じがする。」
そうだ。
おかしい感じがする。
今日は何かがおかしい。
これくらい忙しい日は今までだって度々あった。
しかし、今日のそれとは何かが違う感じだ。
そうだ。
今日はバレンタインデーだったのだ。
やたら、アナベルガトーショコラアイスが出るはずだ。
我が国を訪れてくれる同胞の多くは、
いまだに1年戦争にとらわれており、
その、一般人には理解しがたい収集癖やこだわりのせいで、
お互い理解しあえる恋人や人生のパートナーと
めぐり会えないでいる。
今日は、そんな同胞の孤独な現実が、
いやというほど思い知らされる、
呪われた記念日なのだ。
つまり、
そういったパートナーと過ごすことのできない同胞が、
互いに寂しい心をなぐさめあうために、
我が国に集まったのだ。
そして、閉店後の静けさ。
この違和感の正体は、
この時間にご常連がいないことだ。
いつもなら、
閉店後も数人のご常連が店に残っていて、
そのかたわらで店の後片付けを行っているのだ。
なのに、
今日はご常連が一人もいない。
いや、来なかった。
第13独身部隊の連中め、
見栄をはりやがったな。
--------------------------------------------------
本日のクルー
店長:ランバラル大尉、オーナー:ハモン
捕虜:フラウボウ3号、6号
--------------------------------------------------
お好み焼き「慈恩弘国」
http://www.ms-06zaku.com/
お好み焼き「慈恩弘国」コミュ(登録=国民)
http://mixi.jp/view_community.pl?id=2975500
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決して貼らないでください。
連邦軍につけいる好機をあたえ、
戦局が不利になってしまいます。
自分のできる範囲で、
できるだけ人に迷惑をかけない独立闘争こそ、
我らの理想である。
ジーク・ジオン。
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数知れぬ死線をくぐり抜けてきた
ジオン公国の元軍人だ。
宇宙世紀009 2月14日晴れ
今日は久しぶりに忙しい営業となった。
2月に入って以来の暇な日々は、
いったいなんだったのか。
先週、フラウボウ達と、営業時間中の店内で
ギターやらアコーディオンを弾いて
海のトリトンを熱唱していたのが
遠い日の記憶のようである。
昨晩は、
開店直後から、たくさんの同胞が帰国を果たし、
小さな店はすぐに満席になった。
遠くは、東京、三重、静岡からも同胞が訪れ、
ジークジオンの大唱和で、
心を一つにした。
楽しい、夢のような一夜であった。
そんな盛況ぶりは、
数字にも表れていた。
先週は週末の営業日3日間をとおして、
平均して1日2、3万の売上げだった。
昨日は一晩で、
8万円を超えた。
先週3日ぶんの売上げを、
1日で超えたのだ。
そんな盛況を支えてくれた、
捕虜のフラウボウたちのがんばりも評価したい。
昨晩のフラウボウは、
3号と6号が任務にあたってくれた。
メガネっコの3号は、
お調子者でとても愛嬌があり、
店を明るくしてくれる。
3号にしか作れない、
必殺技のジャブローの水カクテルも、
久しぶりにくりだしていた。
アゴピアスでライダー。
茶髪のフラウボウ6号は、
とても若いのに、1年戦争に詳しく
訪れた同胞との話題に事欠かない。
6号が料理をお運びした先のテーブルでは、
よく笑いが起こっている。
なにかしら、同胞のツボにはまる事を
言っているのかもしれない。
しかし、6号をはじめて見た同胞は、
そのクールでやさぐれた感じの印象に、
「フラウボウ、お前の人生にいったい何があったんだい?」
と、思わず心配をしてしまうようであるが、
本人に言わせれば、
アムロに言われたとおり、
強い女のコになっただけ。のようである。
この3号と6号が、
よく連携してがんばってくれた。
いつもなら、
わたしが仕入れの時についでに買ってくるパンを
ちょっとつまんだり、
椅子に座って休む時間が少しはあるのだが、
昨晩は、営業開始時間から、
最後の同胞が出国するまで、
少しも休まず、動きっぱなしで、
元気に尽くしてくれた。
本当に、ありがとう。
思えば、
連邦の捕虜は、実によく尽くしてくれる。
それに比べ、私の部下のコズンときたらどうだ。
ホワイトベースの連中に捕虜にされた時、
先方は、南極条約にのっとって、
ちゃんと食事を与えてくれたり、
ちゃんと椅子に座らせて尋問してくれたのに、
牢屋のドアは爆破するわ、
通信室を占領して、
勝手に先方の機密情報を漏洩(ろうえい)するわ、
あげくのはてには、
わたしが命をかけてお守りした
アルテイシア様にタックルまでしおって、
恥ずかしいやつめ。
だいいち、一番恥ずかしいのは、
お前のせいで、いまだにわたしは、
「ランバラルさんといえば、
あの、うかつな仲間達の隊長さんですよね。」と、
うかつ団体の頭目よばわりされていることだ。
おい、コズン。
今もどこかで生きていて、
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これでもわたしは、お前たちのことを、
ずっと気にかけているのだ。
元気ならば、いや命令だ。
元気でいろ。
そしてわたしにその懐かしい顔をみせろ。
昔の事は怒ってないから。な、いいな。
最後の同胞が出国したのは、
閉店時間の11時を少しすぎたころであった。
ちょうど、BGMのMDが最後の曲を流し終えて
音楽が止まった。
さっきまでの賑やかさが嘘のように、
店を静けさが支配していた。
3号が、この静けさの違和感を口にした。
「時間どうりに店が終わった。おかしい感じがする。」
そうだ。
おかしい感じがする。
今日は何かがおかしい。
これくらい忙しい日は今までだって度々あった。
しかし、今日のそれとは何かが違う感じだ。
そうだ。
今日はバレンタインデーだったのだ。
やたら、アナベルガトーショコラアイスが出るはずだ。
我が国を訪れてくれる同胞の多くは、
いまだに1年戦争にとらわれており、
その、一般人には理解しがたい収集癖やこだわりのせいで、
お互い理解しあえる恋人や人生のパートナーと
めぐり会えないでいる。
今日は、そんな同胞の孤独な現実が、
いやというほど思い知らされる、
呪われた記念日なのだ。
つまり、
そういったパートナーと過ごすことのできない同胞が、
互いに寂しい心をなぐさめあうために、
我が国に集まったのだ。
そして、閉店後の静けさ。
この違和感の正体は、
この時間にご常連がいないことだ。
いつもなら、
閉店後も数人のご常連が店に残っていて、
そのかたわらで店の後片付けを行っているのだ。
なのに、
今日はご常連が一人もいない。
いや、来なかった。
第13独身部隊の連中め、
見栄をはりやがったな。
--------------------------------------------------
本日のクルー
店長:ランバラル大尉、オーナー:ハモン
捕虜:フラウボウ3号、6号
--------------------------------------------------
お好み焼き「慈恩弘国」
http://www.ms-06zaku.com/
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ただし、他人のもの、公共のものには
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連邦軍につけいる好機をあたえ、
戦局が不利になってしまいます。
自分のできる範囲で、
できるだけ人に迷惑をかけない独立闘争こそ、
我らの理想である。
ジーク・ジオン。
--------------------------------------------------
わたしの名はランバラル。
数知れぬ死線をくぐり抜けてきた
ジオン公国の元軍人だ。
宇宙世紀009 2月9日晴れ
わたしのギャロップがまた壊れた。
わたしのギャロップとは、
我がお好み焼き慈恩弘国の公用車両で、
マツダファミリアアスティナだ。
思えばこいつを手に入れたのは
いまから6年ほど前、
2003年7月の、よく晴れたある日のことだった。
ハモンと二人で散歩に出かけ、
最初に出会った10万円以下の車を
今日買うことにしよう。と、
思い立ったのがその日であった。
そして、
何件か中古車販売店をまわった。
当時の景気のよさも影響してか、
中古車とはいえ、
なかなか10万円以下というのは見当たらなかった。
そのうち、わたしは、
近所のマツダのディーラーにたどり着いた。
さすがディーラーである。
中古車とはいえ、
200万円台、100万円台の
ピカピカの車ばかりがならぶ。
ここには、さすがにわたしの捜し求める車はあるまい。
と想いながら、
展示場をぶらぶらしていると、
ひときわ目を引く、
みすぼらしい灰色の車を見つけた。

ウルトラ警備隊の車か、
バックトゥーザヒューチャーのデロリアンを連想させる、
奇異なデザイン。
「な、なんで今頃こんなところにこいつがあるんだ?」
「どうかしましたか?」
様子のおかしいわたしにハモンが尋ねた。
「こ、こいつはまちがいない。
あの伝説の車だ。
80年代に青春を過ごしたやつなら、
知らない奴ぁいない。
マツダのファミリアシリーズの異端児。
アスティナだ。」
「アスティナ?新型の重モビルスーツの?」
「まあそんなところだ。
いくらするんだ。
いや、いくらでも買おう。
うぉー。
8万円!
憧れのアスティナが8万円!
そんなものか。
そんなものなのか。
時代が変わったようだな。
すみませーん。
これくださーい。
現金で。」
当時、マクベにザンジバルをとりあげられたわたしにとって、
それは、一騎当千の出会いであった。
わたしはこのアスティナに、
ギャロップ(襲歩:しゅうほ、馬を操り全速力で襲撃するときの足並み)
となずけた。
とはいえ、
手に入れた当初のギャロップは、
まさに暴れ馬であった。
あらゆるところが、
老朽化、消耗、磨耗しており、
ひどい乗り心地であったことを覚えている。
キシリア閣下の息のかかった地球での車両の補給なのだ。
程度の悪さは覚悟の上であった。
幸い、ミッション車だったので、
クラッチ系統の乗り心地の悪さは、
運転の創意工夫でのりきった。
思えば、
マツダのディーラーで、マツダの車を買ったのである。
自分のところの車なのだから、
あと10万円上乗せして、
もう少し手入れした車を売ったほうが、
「10万キロ走った中古車でも、マツダの車はビクともしない。
さすがゴックだ。」
なんて評判もたちそうなものだが、
「現状渡しでこの価格。」ということだった。
よくある話だ。
しかし、その後、
車検や修理でこのディーラーに立ち寄るたびに、
新車を買うようすすめられ、
わたしが、思いのほかしつこく、
何年もこの車に乗れば乗るほど、
営業マンもさらにしつこく、
DMや電話でセールスをかけてくる。
どうも、中古車を永く乗っているユーザーは、
新車を売り込む絶好のターゲットだと
思っているようである。
それはもちろんその通りであるが、
それが客に見え透いてしまうのは、
いかにもまずい。
ある時期、
あまりに電話によるセールスが重なったので、
さすがのわたしも立腹した。
そして、そこの販売店の所長に取り次いでもらい、
わたしは、
その、よく電話をかけてくる営業マンの
声も聞きたくなければ、
DMに押してある判子の名前も見たくない。
永くお世話になってきたが、
金輪際お付き合いさせていただくことはないだろう。
なぜ、
あなた方のお仲間がお作りになり、
あなた方がお売りになった車を、
あなた方に高いお金を出して修理しながら、
好き好んで乗っているのに、
応援してくれないのか。
わたしは、残念で悲しい。
と、関西弁で率直に申し上げた。
その後、
その販売店からセールスの電話がかかってくることは
無くなったが、
同時に整備工場も無くした。
さて、この先どうなることやら。
そんな心細い気持ちでギャロップに搭乗していたある日、
我がお好み焼き慈恩弘国に
一人の整備兵がやってきた。
いつもどこかしらにドクロを身につけたその男は、
アナベルガトーと名乗った。
戦時中は優秀なパイロットだったが、
当時のモビルスーツの知識を活用して、
今は機体の整備で食べているそうだ。
ちょうどギャロップの車検も近づいていたので、
アナベルガトーにお願いすることにした。
アナベルガトーは、
すばらしい仕事をしてみせた。
いままでの修理暦にも言及し、
修理の不備を指摘して改善してくれた。
おかげでわたしのギャロップは、
さらによく走るようになった。
今では、車両の整備に関しては
アナベルガトーに全幅の信頼を寄せている。
アナベルガトーは、
ハードロックをこよなく愛し、
裏家業で、
フィギュアの制作も手がけている。
もちろんプロとしてだ。
現在我が国に展示してある
ひときわ目をひく、本物みたいな旧ザクは、
彼の作品である。
昨日、仕入れの帰りに、
ギャロップの調子がおかしいことに気づいた。
アクセルを踏むとエンジンが咳き込むような不自然な回転をし、
アイドリングが安定しない。
ときおりエンストしそうになる。
以前ガンダムと交戦した際の古傷が
今になって悪化したのかもしれない。
仕入れた食材を店に置いて、
なんとか走行できるうちに、
アナベルガトーの修理工場へ向かった。
アナベルガトーは出払っていていなかったが、
お母さんが出てきてくれて、
代車を貸してくれた。
夜になって、
アナベルガトーが店に来てくれた。
不調の原因はわからないが、
記憶回路がやられていたら、
致命的かもしれない。という事だった。
ギャロップの記憶回路は古いものなので、
今となってはテムレイくらいしか作れない。
しかも、
当のテムレイの調子が一番安定しないので、
頼んだところでちゃんと作ってくれる保障はなく、
事実上、手に入らないものだという。
いよいよ、
わたしもギャロップを降りる時がきたのか。
そんな想いが心をよぎる。
そして今日、
アナベルガトーから通信が入った。
不調の原因は、
動力パイプから漏れたオイルが、
プラグへの電力の供給を妨害し、
発火を不安定にさせていた。ということだった。
おそらく、
ガンダムにビームジャベリンを投げつけられた時の損傷が
原因だろう。
幸い致命的な損傷は無く、
修理もすでに終わっているということだった。
さあ、こうしてはいられない。
すぐにギャロップを回収にむかわねば。
老兵は死なず。
ギャロップもわたしも、
もうしばらく
お役御免とはならないようだ。
--------------------------------------------------
本日のクルー
店長:ランバラル大尉、
--------------------------------------------------
お好み焼き「慈恩弘国」
http://www.ms-06zaku.com/
お好み焼き「慈恩弘国」コミュ(登録=国民)
http://mixi.jp/view_community.pl?id=2975500
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☆★ジオン領拡大作戦進行中☆★

お好み焼き慈恩弘国店舗にてお配りしております、
この「ジオン領宣言シール」を
あなたの所有物に貼って、
ジオンの地球侵略に手を貸そう!
ただし、他人のもの、公共のものには
決して貼らないでください。
連邦軍につけいる好機をあたえ、
戦局が不利になってしまいます。
自分のできる範囲で、
できるだけ人に迷惑をかけない独立闘争こそ、
我らの理想である。
ジーク・ジオン。
--------------------------------------------------
数知れぬ死線をくぐり抜けてきた
ジオン公国の元軍人だ。
宇宙世紀009 2月9日晴れ
わたしのギャロップがまた壊れた。
わたしのギャロップとは、
我がお好み焼き慈恩弘国の公用車両で、
マツダファミリアアスティナだ。
思えばこいつを手に入れたのは
いまから6年ほど前、
2003年7月の、よく晴れたある日のことだった。
ハモンと二人で散歩に出かけ、
最初に出会った10万円以下の車を
今日買うことにしよう。と、
思い立ったのがその日であった。
そして、
何件か中古車販売店をまわった。
当時の景気のよさも影響してか、
中古車とはいえ、
なかなか10万円以下というのは見当たらなかった。
そのうち、わたしは、
近所のマツダのディーラーにたどり着いた。
さすがディーラーである。
中古車とはいえ、
200万円台、100万円台の
ピカピカの車ばかりがならぶ。
ここには、さすがにわたしの捜し求める車はあるまい。
と想いながら、
展示場をぶらぶらしていると、
ひときわ目を引く、
みすぼらしい灰色の車を見つけた。

ウルトラ警備隊の車か、
バックトゥーザヒューチャーのデロリアンを連想させる、
奇異なデザイン。
「な、なんで今頃こんなところにこいつがあるんだ?」
「どうかしましたか?」
様子のおかしいわたしにハモンが尋ねた。
「こ、こいつはまちがいない。
あの伝説の車だ。
80年代に青春を過ごしたやつなら、
知らない奴ぁいない。
マツダのファミリアシリーズの異端児。
アスティナだ。」
「アスティナ?新型の重モビルスーツの?」
「まあそんなところだ。
いくらするんだ。
いや、いくらでも買おう。
うぉー。
8万円!
憧れのアスティナが8万円!
そんなものか。
そんなものなのか。
時代が変わったようだな。
すみませーん。
これくださーい。
現金で。」
当時、マクベにザンジバルをとりあげられたわたしにとって、
それは、一騎当千の出会いであった。
わたしはこのアスティナに、
ギャロップ(襲歩:しゅうほ、馬を操り全速力で襲撃するときの足並み)
となずけた。
とはいえ、
手に入れた当初のギャロップは、
まさに暴れ馬であった。
あらゆるところが、
老朽化、消耗、磨耗しており、
ひどい乗り心地であったことを覚えている。
キシリア閣下の息のかかった地球での車両の補給なのだ。
程度の悪さは覚悟の上であった。
幸い、ミッション車だったので、
クラッチ系統の乗り心地の悪さは、
運転の創意工夫でのりきった。
思えば、
マツダのディーラーで、マツダの車を買ったのである。
自分のところの車なのだから、
あと10万円上乗せして、
もう少し手入れした車を売ったほうが、
「10万キロ走った中古車でも、マツダの車はビクともしない。
さすがゴックだ。」
なんて評判もたちそうなものだが、
「現状渡しでこの価格。」ということだった。
よくある話だ。
しかし、その後、
車検や修理でこのディーラーに立ち寄るたびに、
新車を買うようすすめられ、
わたしが、思いのほかしつこく、
何年もこの車に乗れば乗るほど、
営業マンもさらにしつこく、
DMや電話でセールスをかけてくる。
どうも、中古車を永く乗っているユーザーは、
新車を売り込む絶好のターゲットだと
思っているようである。
それはもちろんその通りであるが、
それが客に見え透いてしまうのは、
いかにもまずい。
ある時期、
あまりに電話によるセールスが重なったので、
さすがのわたしも立腹した。
そして、そこの販売店の所長に取り次いでもらい、
わたしは、
その、よく電話をかけてくる営業マンの
声も聞きたくなければ、
DMに押してある判子の名前も見たくない。
永くお世話になってきたが、
金輪際お付き合いさせていただくことはないだろう。
なぜ、
あなた方のお仲間がお作りになり、
あなた方がお売りになった車を、
あなた方に高いお金を出して修理しながら、
好き好んで乗っているのに、
応援してくれないのか。
わたしは、残念で悲しい。
と、関西弁で率直に申し上げた。
その後、
その販売店からセールスの電話がかかってくることは
無くなったが、
同時に整備工場も無くした。
さて、この先どうなることやら。
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ちょうどギャロップの車検も近づいていたので、
アナベルガトーにお願いすることにした。
アナベルガトーは、
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おかげでわたしのギャロップは、
さらによく走るようになった。
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ハードロックをこよなく愛し、
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彼の作品である。
昨日、仕入れの帰りに、
ギャロップの調子がおかしいことに気づいた。
アクセルを踏むとエンジンが咳き込むような不自然な回転をし、
アイドリングが安定しない。
ときおりエンストしそうになる。
以前ガンダムと交戦した際の古傷が
今になって悪化したのかもしれない。
仕入れた食材を店に置いて、
なんとか走行できるうちに、
アナベルガトーの修理工場へ向かった。
アナベルガトーは出払っていていなかったが、
お母さんが出てきてくれて、
代車を貸してくれた。
夜になって、
アナベルガトーが店に来てくれた。
不調の原因はわからないが、
記憶回路がやられていたら、
致命的かもしれない。という事だった。
ギャロップの記憶回路は古いものなので、
今となってはテムレイくらいしか作れない。
しかも、
当のテムレイの調子が一番安定しないので、
頼んだところでちゃんと作ってくれる保障はなく、
事実上、手に入らないものだという。
いよいよ、
わたしもギャロップを降りる時がきたのか。
そんな想いが心をよぎる。
そして今日、
アナベルガトーから通信が入った。
不調の原因は、
動力パイプから漏れたオイルが、
プラグへの電力の供給を妨害し、
発火を不安定にさせていた。ということだった。
おそらく、
ガンダムにビームジャベリンを投げつけられた時の損傷が
原因だろう。
幸い致命的な損傷は無く、
修理もすでに終わっているということだった。
さあ、こうしてはいられない。
すぐにギャロップを回収にむかわねば。
老兵は死なず。
ギャロップもわたしも、
もうしばらく
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本日のクルー
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ただし、他人のもの、公共のものには
決して貼らないでください。
連邦軍につけいる好機をあたえ、
戦局が不利になってしまいます。
自分のできる範囲で、
できるだけ人に迷惑をかけない独立闘争こそ、
我らの理想である。
ジーク・ジオン。
--------------------------------------------------
わたしの名はランバラル。
数知れぬ死線をくぐり抜けてきた
ジオン公国の元軍人だ。
宇宙世紀009 2月7日晴れ
先日、青森県から我が国を訪れてくれた同胞が、
青森方面の戦況を報告してくれた。
報告によると、
県内ほぼ全域にわたってジオンの勢力が支配しており、
連邦軍は、運動会の大玉ころがしのように
ボールをジムでころがしながら、
一目散に退却しているということだ。
今は、戦況も安定し、
市内も平穏を取り戻しており、
青森市に
ジオン公国軍地球方面軍司令部直属
青森基地が設置されたという。
そしておととい、
青森基地に帰還したこの同胞から、
大量のリンゴが送られてきた。

なんでも、
連邦軍に支配されていた頃のリンゴ屋さんの待遇はひどく、
連邦軍は、リンゴを買ってもお金を払わず、
売り物のリンゴを道路にまき散らかして、
拾わないらしい。
その点、ジオンの軍人は思いやりに満ちており、
子供たちにチョコレートをふるまったりして、
市民にはたいへん人気があるそうだ。
しかし、風のたよりによると、
野戦病院で子供にチョコレートをあげていたジオンの兵士が、
隠れていた連邦軍の少年兵に撃たれたという。
その兵士のその後の安否は伝わってこないが、
少年まで兵士にしたてて、
人様に銃を向けさせるひどい連邦軍のやりかたは、
独立戦争から戦後30年たった今でも、
変わっていないのだと憤りをおぼえる。
送られてきたリンゴは、
連邦軍の圧政から解放してくれたジオンに対して、
リンゴ農家の人々が
すすんで供出してくれたものらしい。
我がお好み焼き慈恩弘国の食糧事情は、
高い関税のかけられた
日本国からの輸入に100%依存しているのが現状だ。
少しでも食料の自給率を高めようと
去年、花を植えていたプランター農地をイチゴ農園に変えて
2、3株ほど植えてみたものの、
実は2個しかつけなかった。
そのイチゴの株が今年実をつけるのも、
まだまだ先の事だ。
兵糧の乏しいこの時期に、
たくさんの新鮮なリンゴの支援物資は、
本当にありがたい。
謹んでお受けいたします。
そして、
わたしは、たいへんすばらしい優良種の人類なので、
連邦軍の捕虜達にも
これらの支援物資をわけへだてなく
分配することにした。
リンゴの詰まったダンボール箱を開けると、
部屋いっぱいにひろがるリンゴの香り。
いつの日か、
世界の戦場が、
ミノフスキー粒子のかわりに、
こんな甘酸っぱいリンゴの香りで満たされる事を、
願わずにはいられない。
--------------------------------------------------
本日のクルー
店長:ランバラル大尉、
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連邦軍につけいる好機をあたえ、
戦局が不利になってしまいます。
自分のできる範囲で、
できるだけ人に迷惑をかけない独立闘争こそ、
我らの理想である。
ジーク・ジオン。
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数知れぬ死線をくぐり抜けてきた
ジオン公国の元軍人だ。
宇宙世紀009 2月7日晴れ
先日、青森県から我が国を訪れてくれた同胞が、
青森方面の戦況を報告してくれた。
報告によると、
県内ほぼ全域にわたってジオンの勢力が支配しており、
連邦軍は、運動会の大玉ころがしのように
ボールをジムでころがしながら、
一目散に退却しているということだ。
今は、戦況も安定し、
市内も平穏を取り戻しており、
青森市に
ジオン公国軍地球方面軍司令部直属
青森基地が設置されたという。
そしておととい、
青森基地に帰還したこの同胞から、
大量のリンゴが送られてきた。

なんでも、
連邦軍に支配されていた頃のリンゴ屋さんの待遇はひどく、
連邦軍は、リンゴを買ってもお金を払わず、
売り物のリンゴを道路にまき散らかして、
拾わないらしい。
その点、ジオンの軍人は思いやりに満ちており、
子供たちにチョコレートをふるまったりして、
市民にはたいへん人気があるそうだ。
しかし、風のたよりによると、
野戦病院で子供にチョコレートをあげていたジオンの兵士が、
隠れていた連邦軍の少年兵に撃たれたという。
その兵士のその後の安否は伝わってこないが、
少年まで兵士にしたてて、
人様に銃を向けさせるひどい連邦軍のやりかたは、
独立戦争から戦後30年たった今でも、
変わっていないのだと憤りをおぼえる。
送られてきたリンゴは、
連邦軍の圧政から解放してくれたジオンに対して、
リンゴ農家の人々が
すすんで供出してくれたものらしい。
我がお好み焼き慈恩弘国の食糧事情は、
高い関税のかけられた
日本国からの輸入に100%依存しているのが現状だ。
少しでも食料の自給率を高めようと
去年、花を植えていたプランター農地をイチゴ農園に変えて
2、3株ほど植えてみたものの、
実は2個しかつけなかった。
そのイチゴの株が今年実をつけるのも、
まだまだ先の事だ。
兵糧の乏しいこの時期に、
たくさんの新鮮なリンゴの支援物資は、
本当にありがたい。
謹んでお受けいたします。
そして、
わたしは、たいへんすばらしい優良種の人類なので、
連邦軍の捕虜達にも
これらの支援物資をわけへだてなく
分配することにした。
リンゴの詰まったダンボール箱を開けると、
部屋いっぱいにひろがるリンゴの香り。
いつの日か、
世界の戦場が、
ミノフスキー粒子のかわりに、
こんな甘酸っぱいリンゴの香りで満たされる事を、
願わずにはいられない。
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ただし、他人のもの、公共のものには
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連邦軍につけいる好機をあたえ、
戦局が不利になってしまいます。
自分のできる範囲で、
できるだけ人に迷惑をかけない独立闘争こそ、
我らの理想である。
ジーク・ジオン。
--------------------------------------------------
わたしの名はランバラル。
数知れぬ死線をくぐり抜けてきた
ジオン公国の元軍人だ。
宇宙世紀009 2月4日晴れ
今年になって、
我がお好み焼き慈恩弘国の売上げが
安定しない。
マイミクの浩さまから、
「1月、2月の飲食は暇だよ。」
と聞いていたので、
そういうことなのかもしれない。
もともとジオン公国の復活が
わたしの目的だ。
お好み焼き屋の営業も、
その手段のひとつにすぎない。
だからといって、
手を抜いているわけでも、
どうなってもよいとは、
もちろん思っていない。
あらゆる結果も想定している。
わたしが得意としていたゲリラ戦は、
捨て鉢状態で、
闇雲に突撃する戦法ではない。
むしろ通常の突撃より、
よほど周到な準備をし、
あらゆる結果を想定し、
刻々と変わる状況に対応する能力が
求められる。
当然、我がお好み焼き慈恩弘国にも、
数々の仕掛けや工夫がされている。
そのひとつに、
マーケットセグメンテーションという戦略を導入している。
わたしがサブプライムローンを利用し、
頭金無しで奇跡的に現在の物件を購入したのは、
一昨年の3月だ。
国道沿いで、近隣商業地。
商売をするにも、
住むにも適さない物件として、
不動産屋に紹介された。
賊軍の将校にふさわしい棲家だ。
以前のこの家のオーナーは、
9年この家に住み、
4年目でお好み焼き屋に見切りをつけたそうだ。
不動産屋も、
月商10万が関の山だという。
しかしそれは、
重力にしばられた、
地球連邦のモグラどもの物差しにすぎない。
我らスペースノイドには、
もっと無限の尺度の物差しがあることを、
連中は理解していない。
あえて言おう。
カスであると。
保身と打算しか頭に無い地球人が、
地球人に対して商売をしたなら、
たしかにそんなものだろう。
しかし、
ジオン人が、
思いやりの心で満ち溢れたジオン人に対して
お好み焼きを焼いたならば、
けっしてそうはならない事を
我らは皆知っている。
まさに、
かつてジオンダイクンが提唱した、
ビジネスモデルの革新。
ニュータイプビジネスモデルの出現だ。
つまり、
あの凄惨な独立戦争から戦後30年。
世界中に離散した同胞が、
たとえ19坪の極小の国だとしても、
ジオン復活の報を聞きつけてくれれば、
必ず万難を排して、
ここを目指してくれると、
私は信じていた。
いや、確信していたのだ。
その点に関しては、
今のところ、
わたしの予想どうりとなっている。
今やほぼ日本の全県から同胞が訪れ、
海外は、アメリカ、中国、イギリスからも、
同胞がやって来てくれた。
店は毎日遠方からの同胞で溢れ、
共にジーク・ジオンを大声で唱和し、
懐古談に花を咲かせ、
皆、今度こそガンダムなんかに気を取られることなく、
ちゃんと独立しよう。と誓い合って、
店を去ってゆく。
この楽しい日々。
これこそが、わたしが思い描いていた、
お好み焼き慈恩弘国の
ニュータイプビジネスモデル。
通勤、通学、近隣の客をまったく相手にしない、
世界中のジオンの同胞だけを相手にした、
「さあ、世界の国から一見さんいらっしゃい。」作戦だ。
しかし、今年に入って、
金曜の予約が減り始めた。
続いて日曜も減り始めた。
こんな規模のお好み焼き屋で、
予約の数を気にすることはなかろう。と、
お思いの向きも多いだろうが、
遠方からの客が全ての我が国にとって、
予約が減るということは、
即、店の人気の凋落を意味している。
先日の2月1日の日曜は、
とうとう予約はゼロのまま、
営業をはじめた。
開店と同時に、
大阪から来たという同胞の男性が一人、
店に入って来てくれた。
彼は、ドム焼きといくつかのお酒を注文してくれた。
そして、小一時間ほど滞在し、
とても楽しい雰囲気の店なので、
今度は仲間の部隊とともに来ます。と言い残して、
去っていった。
結局、この日訪れた初入国のお客さんは、
この大阪からの同胞一人であった。
大阪からの同胞が出国する少し前に、
常連のラング准将がやって来ていた。
今日の労役に服してくれるフラウボウは、
2号と5号だ。
店には、わたしと、フラウボウの2人、
そして常連のラング准将の4人だけになった。
がらんとした店に流れるBGMが、
かえって静寂に聞こえる。
せっかくなので、
2号と5号とわたしは、
ラング准将はいないものと考え、
普段は手の届かない場所などの
大掃除を始めた。
「わたしがこの店で働き始めたころは、
こんな日がよくありましたね。
あの頃は暇で、フラウボウは一人でしたし、
懐かしいです。」と
2号が言った。
思えば、2号が我が国に奉仕してくれるようになって、
今月でちょうど1年目になる。
この春、大学を卒業し、
もう間もなく釈放される。
2号は、我が国の建国、繁栄、そして、
衰退を見届け、去ってゆくのか。
店の電話が鳴った。
常連のガトー少佐が、
今から入国したいとの打診であった。
また電話が鳴った。
ご常連のハマーンさまとドレンさまが、
やはり、今から入国したいとのことであった。
店のドアが開き、
ご常連のルーファスさまが、
はるばる岩倉からバイクでやってきた。
岩倉は京都市内の北東の端で、
我が国は南西の端に位置している。
いつも30分以上はかけて来ているはずだ。
続いて、忍々さまがやってきた。
みなご常連だ。
ハマーンさまが、
「これ差し入れ。」と言って、
「MAXコーヒー」をいっぱいくれた。

「MAXコーヒー」は、わたしの大好物の飲料だ。
わたしは、コーヒーの味のわからない男である。
コーヒーの美味しさは、
砂糖とミルクの量だと信じている。
その点「MAXコーヒー」は、
最高に甘く、そしてミルキーなのだ。
見渡せば、
店はご常連のお客様でにぎわっていた。
それぞれが、この店で知り合い、
今や顔見知りとなっていた。
特に、
ルーファスさまと、
忍々さまは気が合うようで、
今日は一緒にファミコンで盛り上がっている。
さっきから、
わたしの左手に時折パンチが飛んできている。
横を見ると、
2号が5号に空手の型を教えて、
2人で、わたしに戦いを挑んでいた。
「2号。
今日は新規のお客さんは一人しか来てないし、
いつもに比べたら売上げも悪い。
でも、開店当初、
おれたち2人で暇をもてあましていたあの頃と違うことが
2つあるぞ。
1つは、この店にご常連ができた事と、
もう1つは、お前に仲間ができた事だ。
こんな事、あの頃には想像できなかったな。」
--------------------------------------------------
本日のクルー
店長:ランバラル大尉、オーナー:ハモン
捕虜:フラウボウ2号、5号
--------------------------------------------------
お好み焼き「慈恩弘国」
http://www.ms-06zaku.com/
お好み焼き「慈恩弘国」コミュ(登録=国民)
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ただし、他人のもの、公共のものには
決して貼らないでください。
連邦軍につけいる好機をあたえ、
戦局が不利になってしまいます。
自分のできる範囲で、
できるだけ人に迷惑をかけない独立闘争こそ、
我らの理想である。
ジーク・ジオン。
--------------------------------------------------
数知れぬ死線をくぐり抜けてきた
ジオン公国の元軍人だ。
宇宙世紀009 2月4日晴れ
今年になって、
我がお好み焼き慈恩弘国の売上げが
安定しない。
マイミクの浩さまから、
「1月、2月の飲食は暇だよ。」
と聞いていたので、
そういうことなのかもしれない。
もともとジオン公国の復活が
わたしの目的だ。
お好み焼き屋の営業も、
その手段のひとつにすぎない。
だからといって、
手を抜いているわけでも、
どうなってもよいとは、
もちろん思っていない。
あらゆる結果も想定している。
わたしが得意としていたゲリラ戦は、
捨て鉢状態で、
闇雲に突撃する戦法ではない。
むしろ通常の突撃より、
よほど周到な準備をし、
あらゆる結果を想定し、
刻々と変わる状況に対応する能力が
求められる。
当然、我がお好み焼き慈恩弘国にも、
数々の仕掛けや工夫がされている。
そのひとつに、
マーケットセグメンテーションという戦略を導入している。
わたしがサブプライムローンを利用し、
頭金無しで奇跡的に現在の物件を購入したのは、
一昨年の3月だ。
国道沿いで、近隣商業地。
商売をするにも、
住むにも適さない物件として、
不動産屋に紹介された。
賊軍の将校にふさわしい棲家だ。
以前のこの家のオーナーは、
9年この家に住み、
4年目でお好み焼き屋に見切りをつけたそうだ。
不動産屋も、
月商10万が関の山だという。
しかしそれは、
重力にしばられた、
地球連邦のモグラどもの物差しにすぎない。
我らスペースノイドには、
もっと無限の尺度の物差しがあることを、
連中は理解していない。
あえて言おう。
カスであると。
保身と打算しか頭に無い地球人が、
地球人に対して商売をしたなら、
たしかにそんなものだろう。
しかし、
ジオン人が、
思いやりの心で満ち溢れたジオン人に対して
お好み焼きを焼いたならば、
けっしてそうはならない事を
我らは皆知っている。
まさに、
かつてジオンダイクンが提唱した、
ビジネスモデルの革新。
ニュータイプビジネスモデルの出現だ。
つまり、
あの凄惨な独立戦争から戦後30年。
世界中に離散した同胞が、
たとえ19坪の極小の国だとしても、
ジオン復活の報を聞きつけてくれれば、
必ず万難を排して、
ここを目指してくれると、
私は信じていた。
いや、確信していたのだ。
その点に関しては、
今のところ、
わたしの予想どうりとなっている。
今やほぼ日本の全県から同胞が訪れ、
海外は、アメリカ、中国、イギリスからも、
同胞がやって来てくれた。
店は毎日遠方からの同胞で溢れ、
共にジーク・ジオンを大声で唱和し、
懐古談に花を咲かせ、
皆、今度こそガンダムなんかに気を取られることなく、
ちゃんと独立しよう。と誓い合って、
店を去ってゆく。
この楽しい日々。
これこそが、わたしが思い描いていた、
お好み焼き慈恩弘国の
ニュータイプビジネスモデル。
通勤、通学、近隣の客をまったく相手にしない、
世界中のジオンの同胞だけを相手にした、
「さあ、世界の国から一見さんいらっしゃい。」作戦だ。
しかし、今年に入って、
金曜の予約が減り始めた。
続いて日曜も減り始めた。
こんな規模のお好み焼き屋で、
予約の数を気にすることはなかろう。と、
お思いの向きも多いだろうが、
遠方からの客が全ての我が国にとって、
予約が減るということは、
即、店の人気の凋落を意味している。
先日の2月1日の日曜は、
とうとう予約はゼロのまま、
営業をはじめた。
開店と同時に、
大阪から来たという同胞の男性が一人、
店に入って来てくれた。
彼は、ドム焼きといくつかのお酒を注文してくれた。
そして、小一時間ほど滞在し、
とても楽しい雰囲気の店なので、
今度は仲間の部隊とともに来ます。と言い残して、
去っていった。
結局、この日訪れた初入国のお客さんは、
この大阪からの同胞一人であった。
大阪からの同胞が出国する少し前に、
常連のラング准将がやって来ていた。
今日の労役に服してくれるフラウボウは、
2号と5号だ。
店には、わたしと、フラウボウの2人、
そして常連のラング准将の4人だけになった。
がらんとした店に流れるBGMが、
かえって静寂に聞こえる。
せっかくなので、
2号と5号とわたしは、
ラング准将はいないものと考え、
普段は手の届かない場所などの
大掃除を始めた。
「わたしがこの店で働き始めたころは、
こんな日がよくありましたね。
あの頃は暇で、フラウボウは一人でしたし、
懐かしいです。」と
2号が言った。
思えば、2号が我が国に奉仕してくれるようになって、
今月でちょうど1年目になる。
この春、大学を卒業し、
もう間もなく釈放される。
2号は、我が国の建国、繁栄、そして、
衰退を見届け、去ってゆくのか。
店の電話が鳴った。
常連のガトー少佐が、
今から入国したいとの打診であった。
また電話が鳴った。
ご常連のハマーンさまとドレンさまが、
やはり、今から入国したいとのことであった。
店のドアが開き、
ご常連のルーファスさまが、
はるばる岩倉からバイクでやってきた。
岩倉は京都市内の北東の端で、
我が国は南西の端に位置している。
いつも30分以上はかけて来ているはずだ。
続いて、忍々さまがやってきた。
みなご常連だ。
ハマーンさまが、
「これ差し入れ。」と言って、
「MAXコーヒー」をいっぱいくれた。

「MAXコーヒー」は、わたしの大好物の飲料だ。
わたしは、コーヒーの味のわからない男である。
コーヒーの美味しさは、
砂糖とミルクの量だと信じている。
その点「MAXコーヒー」は、
最高に甘く、そしてミルキーなのだ。
見渡せば、
店はご常連のお客様でにぎわっていた。
それぞれが、この店で知り合い、
今や顔見知りとなっていた。
特に、
ルーファスさまと、
忍々さまは気が合うようで、
今日は一緒にファミコンで盛り上がっている。
さっきから、
わたしの左手に時折パンチが飛んできている。
横を見ると、
2号が5号に空手の型を教えて、
2人で、わたしに戦いを挑んでいた。
「2号。
今日は新規のお客さんは一人しか来てないし、
いつもに比べたら売上げも悪い。
でも、開店当初、
おれたち2人で暇をもてあましていたあの頃と違うことが
2つあるぞ。
1つは、この店にご常連ができた事と、
もう1つは、お前に仲間ができた事だ。
こんな事、あの頃には想像できなかったな。」
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本日のクルー
店長:ランバラル大尉、オーナー:ハモン
捕虜:フラウボウ2号、5号
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お好み焼き「慈恩弘国」
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お好み焼き「慈恩弘国」コミュ(登録=国民)
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☆★ジオン領拡大作戦進行中☆★

お好み焼き慈恩弘国店舗にてお配りしております、
この「ジオン領宣言シール」を
あなたの所有物に貼って、
ジオンの地球侵略に手を貸そう!
ただし、他人のもの、公共のものには
決して貼らないでください。
連邦軍につけいる好機をあたえ、
戦局が不利になってしまいます。
自分のできる範囲で、
できるだけ人に迷惑をかけない独立闘争こそ、
我らの理想である。
ジーク・ジオン。
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