庭球にかける青春6
庭球6


みなさま、おはようございます。

エナジー中野でございます。


およそ、30組のなかから、
第1回戦を突破したわたくしたちは、

その時点で舞鶴市内における、
ベスト16位のコンビに昇格したのでございます。


きむら君は、
「良し。良し。」と、

うつむいて地面を誉めております。


この男とはこの時の縁以来、
浪人時代を経て彼が大学に合格するまで、
懇意に交流を続ける事になるのでございます。


どの校も、戦力のおおかた半分を失っておりました。


我らがセコキントリオも、
わたくし達を除いて姿を消してございます。

わたくしたちは、
Cコート仲間から、
しばし英雄として讃えられたのでございます。



いよいよ2回戦。

なんとその試合は、
あの輝かしい垂涎のコート、
憧れのAコートで行われました。


練習でも、試合でも、
堂々と立ち入ったのは、
この時が初めてでございます。

粒子の細かい白い土で、
どこまでもフラットな美しいコートは、
すっかり高くなった太陽光線を反射して、
いっそうまぶしく輝いていたのでございました。


共に辛酸をなめた相方のきむら君も、
感慨ひとしおだった事でございましょう。


しかし、対戦相手は最悪でございました。
城南中学の四天王のうちの2人のコンビで、
もちろん優勝候補の一角でございました。

わたくしどもが、たいした実力を有していない事は、
どうやら我が校の上層部の連中が先方に耳うちしていたようで、
最初から、やる気のない態度でございます。

浅黒い南方系民族を思わせる、
城南コンビ。

いかにも強そうでございます。


それに比べて、
色白で、頼り無さげなわたくしどもは、
いかにも脆弱にうつった事でございましょう。

しかしそこに、
いちるの望みがあったのでございます。

その時のわたくしたちは、
皆にさんざんおだてられたせいで、

「我々は、人口10万人の舞鶴で、
 16位に入る実力をもっているのだ」という勘違いと、

自らの実力で、
あの地獄のようなCコートから、
憧れのAコートにのぼりつめたのだという
根拠の見当たらない自信に溢れていたのでございます。


試合開始。

連中がはじめて目の当たりにする中野サーブは、
面白いように決まりました。

大袈裟なモーションで放たれる、
超ひねくれたスロー変化球は、

パワーテニスを得意としていた連中を翻弄し、
何度もつんのめらさせ、
ミスを誘いました。


しかしサーブ権が移行すると一転、
連中の独壇場でございました。

レーザービームのような、
城南の背の低い後衛が放つファーストサーブは、
まったく手が出なかったのでございます。


きむら君は正義を重んじる男でございましたが、
自分の都合が悪くなると価値観があやしくなります。

「今のサーブ絶対入っとらんで。」と
文句をいっております。


ラリーに持ち込まれても、
もともと実力の無いわたくしどもには不利でございました。
緩急をつけた見事な返球で、
前後左右に打ちわけられ、

わたくしどもは、
苦戦を強いられました。


しかし連中も、
所詮はうちのAコートの連中と同じような、
エリート教育を受けたぼっちゃん育ちでございます。

攻撃に独創性がございません。

わたくしをできるだけ右に走らせ、
とどめをわたくしの左側、
むずかしいバックハンドで失敗を誘うという
基本パターンは崩せなかったのでございます。


このセオリーに対して、
わたくしには2つの利点がございました。

1つは、
わたくしは、フォアハンドはちゃんとドライブをかけて、
速い返球ができるのですが、
むずかしいバックハンドは、
打面が上を向く、くせのせいで、

ラケットを必ず下に振り抜き、
カットして返球するのでございます。

連中は、
とどめに、強烈に打ち込んだつもりのバック側からの返球が、
逆回転のかかった超スローボールなので、

城南の、浅黒い背の低い後衛は、
やはり何度もつんのめっておりました。


2つめは、
いくら左右にふられても、
わたくしは鈍足ながらも、
ボールを追い続ける事ができたのでございます。

それは、わたくしの運動能力に関する、
ほぼたった一つの長所。

持久力でございました。

わたくしは校内マラソン大会において、
1000人近い全校生徒のなかで25位の実力を
誇っていたのでございます。


試合は当初、善戦とはいえ、
城南のペースでございました。

しかし、予想以上に試合がもつれ、
後半にもなりますと、
わたくしは、
下手なくせにボールにしつこく食らい付く持久力を発揮し、
いつの間にか、
城南のエースと互角の戦いをしていたのでございます。


また、
我が白糸の監督先生は、
わたくしどもの試合などほったらかしで、
ございましたが、

この相手は、
どうやら城南の監督期待のルーキーだったようで、
試合開始からずっと、コートの後ろから、
監督が熱心に激をとばしておりました。


いろいろアドバイスがしてもらえて、
羨ましいかぎりでございますが、
まるでわたくしたちが諸悪の根源のような
いいようでございます。


わたくしは蛇のようにしつこくボールに食らい付き、
得意のカット打法で返球し続けます。

相手は、疲労とくせのあるボールのうっとおしさで、
いらいらしております。

きむら君は、
好転する状況に、
「良し。良し。」とガッツポーズをしております。

彼は、人がずるい事をするのには厳しい男ですが、
自分がその恩恵にあずかるぶんには、
あまりとやかく言わない人間でございます。


試合はもつれにもつれ勝負がつかず、
ついにファイナルゲームにもちこされました。

その頃になりますと、
さすがに我校の監督先生も異変に気づき、
Aコートにやってきておりました。

しかし、大半は城南の味方で、
ムードは、
「城南のエースやろ。
 こんな連中に負けるな。」

という雰囲気でいっぱいでございます。

そして、
観衆のなか、ファイナルゲームはさらに熾烈を極め、
デュースに持ち越された時。
相手のレシーブがサイドアウトいたしました。

勝利に王手でございます。

わたくしが、
「よっしゃ!」と申しましたが、
審判の判定は「イン」でございました。

正義の男、きむら君が猛烈に抗議しております。


こういった事はよくございます。

試合に熱中しておりますと、
実際には、かなりのスピードが出ているボールなのですが、
それこそミリ単位で見えるのでございます。

試合の当事者は全員、
このボールがアウトである事は自覚しておりました。

城南のコンビがニヤニヤしながら、
ポジションを変わってゆきます。

きむら君は、ブツブツ不満をもらしております。

アドバンテージ&マッチポイントを取られてしまいました。
あと1点で負けでございます。


その時。

あの敵意丸出しだった城南の監督が、




「審判。今のは出たで。」




と、申し出たのでございます。

・・・・静寂・・・・。




「審判!今のは出とったで!よう見とらんかい!」




・・・・静寂・・・・。

「あっ。すみません。
 ボールカウント、アドバンテージレシーバー
 レシーバーマッチポイント。」


別に歓声は沸き上がりませんでしたが、
城南のエースと、わたくしたちは、
無言で試合を再開いたしました。




結局試合は、わたくしたちが勝利しました。

城南の2人はベンチの横で、悔しくて半泣きになっており、
監督が背中をたたいて健闘をねぎらっております。


わたくしたちは、その次の3回戦では、
上級生にあっけなく負けましたが、

舞鶴市内ベスト8の称号を得たのでございます。


この時の功績が認められ、
わたくしときむら君は、Aコートに昇進して、
しばらく監督の指導のもと、

ちゃんとしたテニスを練習させられるのですが、

その正しい指導のおかげで、
すっかり調子が狂ってしまい、

Bコート、Cコートと転落するのに、
時間はかからなかったのでございます。
2008/05/16 | 庭球にかける青春 | コメント(36) | トラックバック(0) | page top↑
コメント
ありがとうございました!

これでお話は終わりなのでしょうか?
もっと読みたいです
2008/05/16 08:36 | URL | かいととと #- [編集] | page top↑
#かいととと さま

ありがとうございます。
そんなに言ってくださって、
とても嬉しいです。

庭球にかける青春シリーズはこれでおしまいです。

じゃあ、また別の何かをアップしますので、
よかったらお楽しみくださいませ。

ありがとうございました。
2008/05/16 10:28 | URL | ランバラル #- [編集] | page top↑
シリーズ終了とわ・・・・・・・・・

では是非、お色気帝国物語の続きを執筆なさってくださいませ♪
2008/05/18 10:29 | URL | ばな #- [編集] | page top↑
# ばな さま

ありがとうございます。
お色気帝国、読んでいただいたのですか。

長いのに、ありがとうございます。

個人的には、
とても気に入って書いてたものですから、
嬉しいです。

生活に流されて、
もう永く続きを書いてませんが、

ぜひ書かせていただきます。

ありがとうございました。
2008/05/18 11:49 | URL | ランバラル #- [編集] | page top↑
このコメントは管理者の承認待ちです
2011/01/04 01:13 | | # [編集] | page top↑
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2011/01/04 01:14 | | # [編集] | page top↑
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