慈恩弘国業務日報0081211
わたしの名前はランバラル
数知れぬ死線をくぐり抜けてきた
ジオン公国の元軍人だ。

宇宙世紀008年 12月 11日 晴れ


南極条約における捕虜の扱いについて、
その取り決めは多岐にわたる、

しかも、レビル将軍に逃げられたせいで、
ジオン側にとっては、
かなり不利な条約となっている。

そのひとつに、
ジオン軍が連邦軍側の人間を捕虜にした場合、
1年に1回以上は、
慰安旅行に連れて行かねばならないというのがある。

しかたが無いので、
毎日の売上から1000円ずつ貯金して、
旅行の資金をためた。

全額とはいかなかったものの、
お小遣い程度には、みんなのぶんがたまったので、
先日、店を休んで捕虜を連れて1泊2日の旅行に出かけた。

行き先は、
マチルダさんが、
「温泉!温泉!」とうるさいので、
温泉に決まった。

具体的にいうと、
京都市内から小1時間ほどの距離にある、
「るり渓温泉」というところだ。

フラウボウ2号と5号は、
朝9時に我が国に集合し、わたしのギャロップで
9時30分に出発。

途中、マチルダさんと、フラウボウ3号を乗せた
アムロ君のバギーと
別の集合場所で合流して、
目的地に向う段取りだ。

しっかり者の2号が、
9時少し前にやってきた。
同じ頃、5号から電話がかかってきた。
「すみません。30分ほど遅れます。」

どうやら今起きたようだ。

しばらくして、
5号は、自分でも言ったように、
30分ほど遅れてやってきた。

5号は、なにか気まずい事をしでかしたとき、
目線をそらし、
伏し目がちでおろおろする。
そして、自分を助けてくれる人を探す。

その場にちょうど2号がいたので、
2号のそでにすがりついて、
遅刻をした気まずさに耐えていた。


さあ出発だ。


アムロ君との集合場所は、
高速道路の入口ちかくのコンビニの駐車場だった。
わたしのギャロップが先についたが、
アムロ君のバギーもほどなくやってきた。

そのコンビニで、車の中で食べるお菓子とジュースを
買うことにした。

5号が、
「お昼ご飯も買っていいですか?」
と聞いてきた。

こいつ、腹がへっているようだ。

「いや、残念だが昼飯は現地でとる。
 お菓子でがまんせよ。」というと、

5号は、お菓子をいっぱい買っていた。


我々は一路、高速道路を北へ向った。
時刻は10時30分。
まだ朝の雰囲気の残る、
秋晴れの京都縦貫道は、よくすいていて心地よかった。

料金所を1つ越えて、千代川出口で高速道路を降りる。

ここは、丹波篠山の入口だ。
府道73号線を西へ向う。

景色はどんどん、
日本の原風景に姿を変える。

国道372号線を右折し、さらに西へ、

このあたりは視界がひらけている。
広い田んぼの中を
どこまでも続く一筋の道。
遠くその周囲を、丹波の山並みが囲む。

今年は台風がひとつも来なかった。
そのおかげで、
桜をはじめ、例年なら、この時期に落葉しているはずの木も、
紅葉に色を添え、丹波の山並は、
色とりどりの暖色におおわれていた。

青い空と紅葉のコントラストが
美しかった。


府道54号を左折し南へ向う。
とたんに道幅が狭くなり、
すれ違いも困難なほどだ。

るり渓に続く小川に、
道は平行していた。

るり渓とは、奇岩や怪石がおよそ4キロも続く渓谷である。
時折車窓から見える川の表情に、
それは表れていた。


12時前には、現地に到着した。

るり渓温泉は、
テニスコートや天体観測ドームなどの施設を備えた、
レジャーランドのような場所だ。

我々は、少し早かったが、
レストランで昼食をとる事にした。

うどんを注文すると、
洗面器のような巨大な鉢で出てきた。

かといって量が多いという訳では無い。

そして、しゃもじくらいの大きさがあるレンゲ。


5号は麺類を食べる時、
左手でレンゲを持ちながら、
麺をスープと一緒にすするのが好きらしい。

この巨大なレンゲの重さに耐えながら、
一生懸命食べていた。

しかし、となりのテーブルの子どもは
鉢に上半身をつっこんで、さらに苦労していた。

マチルダさんは笑うばかりで、
写真を撮って遊んでいた。


チェックインは2時だった。まだ時間がある。
それまで園内の施設で時間をつぶすことにする。
2時に駐車場に集合ということで、
ここでいったん解散した。

好奇心旺盛なフラウボウ3号は、
フィッシュテラピーに挑戦するといって、
足を魚につつかれに行った。

同じ年で仲のいいフラウボウ2号と5号は、
休憩室でおしゃべりに興じた。

わたしとハモン、
アムロ君とマチルダさんは、
敷地内を探検に出かけた。

駐車場脇に立っている、
敷地内の施設の案内板には、
様々な施設が紹介されていた。

中でも興味をそそられたのは、
ゼロ戦研究所だ。

「すごい。ゼロ戦だ。ゼロ戦。」わたしが興奮すると、
「研究してるだけで、飛行機は無いかもしれませんよ。」と、
アムロ君がクールにこたえた。

しかし、看板にはゼロ戦のイラストが描いてある。

「ほら、ゼロ戦の絵が描いてある。
 あるんだよ、ゼロ戦が。」

なにはともあれ、
我々はそのゼロ戦研究所に向かった。

ゼロ戦とは、
大日本帝国海軍の主力艦上戦闘機で、
正式には、零式艦上戦闘機という。
第二次世界大戦初期には、外国の戦闘機を圧倒した
我が国のザクのような、すごい戦闘機だ。

今から思えば、
なんでこんな丹波の山奥でゼロ戦を研究しているのか。
そもそもなんでゼロ戦なのか。
疑問を持つべきであったのかもしれない。

ゼロ戦研究所は、
前面がガラスのサッシで中が見えるようになっている、
プレハブの小屋だった。

遠くからでも、
その中に戦闘機が展示されていることがわかった。
わたしは、はやる想いをこらえきれず、
駆け寄った。

光の反射でどうも中が見えずらい。
わたしは窓に額をこすりつけて、
ゼロ戦の雄姿をよく見ようとした。

緑色に塗られた機体。
日の丸。尾翼が錆びて欠落しているのは、
戦後の長い歳月によるものか。

しかしなにかが違う。

2人乗り?
自慢の可変式の3枚プロペラが、
なぜか2枚。
胴体がなんか丸い。
栄エンジンのスリムなシルエットが、
なぜか短くずんぐり。

ピトー管や機銃のあった穴もない。
つるつる。

このタンデム仕様のゼロ戦。
説明は、唯一スペックの書かれたプレートが傍にあるだけ。
しかも、どこを見ても、
ゼロ戦とは一言も書かれていない。

そして、
そばに「人間魚雷回天」と書かれた、
こちらはえらく複雑な形をした、
どんな歴史資料でも見たことも無い「回天」。

「機雷」と書かれた、
丸い鉄の塊がごろん。


わたしはこのときハッと気づいた。

ここは思いのほか、パラダイスだ。
なにも信じてはいけない、
誰かが勝手につくった異世界だ。

わたしたちはそう気持ちを切り替えて、
ふたたび、るり渓温泉パラダイスの調査を続行した。

ゼロ戦研究所の傍には、
カブトムシ広場がある。

それは自動車くらいの大きさの
小さなぼろぼろのビニールハウスだった。

中には、低いコナラの木が植えてあって、
枯れた雑草で覆われていた。

この地中にカブトムシの幼虫が眠っているのか。

しかし今、
ここがカブトムシ広場である面影は、
ビニールハウスの破れたビニールの繊維に絡みついた、
1本の、ぼちれたカブトムシの足が物語るのみだった。


しばらく進むと、
ポッチーという怪獣が棲むという
池に出た。

我々は、しばらくポッチーが出現するのを
息をこらして待ったが、
鏡のような池の水面には、
波風ひとつ立たず。

寒さにこらえきれなくなった我々は、
その場を後にした。

さらに行くと、
ネパール友好館という、
3階建ての木彫の塔が出現した。


説明文には、
この塔は、花と緑の博覧会で展示されたもので、
すべてネパール現地の職人が手がけ
製作されたものだと書いてある。

細部にわたり精巧な作りだ。
高さはおよそ、15メートルくらいはあるだろう。
近くでみると、その大きさとディテールに関心する。

しかし、
あのゼロ戦に、カブトムシの足に、ポッチーと続いて、
このネパール友好館なのだ。

この流れでいくと、どうもウソくさい。


さらに進むと、
「石の動物たちの広場」に出た。

そこは山の斜面を切り開いた感じで、
傾斜のきつい草木の伐採されたむき出しの土地に、
大小さまざまな石の動物が点在していた。

大きさもバラバラ、
完成度もバラバラ。

なかなかリアルでかっこいいものもあれば、
信楽焼きのタヌキのようなものまで置いてある。

楽しい。

マチルダさんに大きなライオンの石像にまたがってもらって、
ナルニア国物語ごっこなどをして、
遊んだ。

ものすごい下手な絵を立体にしたような、
パンダの石像もあったので、
今、足を魚に食われている、
パンダ好きの3号にメールで写真を送っておいた。

そうこうしているうちに、
集合時間の2時になった。

我々はチェックインを済ますと、
部屋に案内された、
部屋は、男子部隊と女子部隊で、
2つ用意してもらった。

夕食は6時。
男子部隊は、それまで温泉に入ることにした。
女子部隊は、部屋で女子話でかなり盛り上がったようだ。

るり渓温泉は、
普通の温泉とは別に、水着着用で入れる、
プールや露天風呂などの施設がある。

マチルダさんが、もう何年も水着なんて着ていないというので、
3号が気をきかせてマチルダさんの分を持ってきたようだ。

それが、えらくセクシーなものだったそうで、
もし着用してプールに現れでもしたら、
たくさんのカイ・シデンが恥のかきついでに、
近づいてきたかもしれない。



夕食はボタン鍋だった。
ボタンとはイノシシの肉のことだ。

鍋のほかにも、シシ肉の陶板焼きもあった。
コンロで陶板を熱し、
料理長秘伝の味噌で味付けした肉を、
その上で焼いた。

肉が大好きな3号は、
うほうほ言いながら美味しそうに食べていた。

3号は、自分の陶板焼き用の肉がなくなると、
まだ食い足りなかったようで、
鍋用の肉に手を出し陶板で焼き始めた。

「大尉!これはこれで美味いです!」と嬉しそうに
食べていた。

あんまり美味しそうに食べるので、
ほかのみんなも鍋用の肉を焼いて食べ始めた。
本番のボタン鍋用の肉はすっかり減ってしまった。

夕食後は、9時からカラオケルームを予約していた。

それまで少し時間があったので、
わたしとハモンは天体観測ドームへ行くことにした。
他のみんなは温泉に行ったり、岩盤浴に行った。

この日はよく晴れていて、
12月の透明な夜空は、
どこまでも透けているようだった。

はるか彼方のオリオン星雲のかすみ雲さえ、
ここからはよく見えた。


カラオケは、
当たり前のようにアニソン大会になった。
残念ながら温泉地のカラオケには、
そうレパートリーが無い。

あんまり歌える歌が無い。
とハモンが文句をいいながらも、
愛おぼえていますか。を熱唱していた。

おどろいたのはマチルダさんだ。
キューティーハニーを歌ったら、
めちゃめちゃカワイイ。

お願いして魔女っこメグを歌ってもらった。
魅惑のシャランラに、
全員が酔いしれた。


部屋に戻ると、
男子部隊はすぐ寝てしまったが、
女子部隊は、
朝まで座談会。と言っていた5号が、
さっさと一番に寝てしまった事件や、
2号の寝言事件、
マチルダさんの山瀬まみのモノマネが上手い事件など、
いろいろ楽しい感じだったそうだ。

次の日もよく晴れていた。
朝はやく目が覚めてしまったわたしは、
1人で、あたりを散歩することにした。

地面には霜柱ができていた。
それをザクザクいわせて、つぶして遊んだ。

霜柱を踏みしめるのは、もう何年ぶりだろう。

思えば、大好きな自転車野宿旅にも、
永く行っていない。

生活が趣味や夢を押し流してゆく。


遠くの山の木立の隙間から朝日が昇ってきた。


それでも、こうやって気の置けない仲間と一緒に、
楽しい時間が過ごせている今のわたしは、
とても幸せである。

こんな営みがずっと続けばいいと心から思うが、
そうもいくまい。
別れもあれば、意見の対立もあるかもしれない。
突然の連邦軍の総攻撃も、
いつ始まるかも知れないのだ。

そうして、この幸せを全て失ったとしても、
わたしの事情などおかまいなしに、

やはり、こうやってあっけらかんと朝はやってくる。

なんという事だろう。
この太陽を、
恐竜だって見ていたのだ。

そう想えば、
わたしのジオン復活の望みが達成されようとも、
わたしが滅び去ろうとも、
たいして違いはないように思える。


願わくばその朝に、
今わたしが大切に想っている幸せが、
ひとつでも多く残っている事を、
祈るばかりだ。




--------------------------------------------------
本日のクルー
店長:ランバラル大尉、オーナー:ハモン、
捕虜:フラウボウ2号、フラウボウ3号、フラウボウ5号、
   アムロ君、マチルダさん
--------------------------------------------------
お好み焼き「慈恩弘国」
http://www.ms-06zaku.com/

お好み焼き「慈恩弘国」コミュ(登録=国民)
http://mixi.jp/view_community.pl?id=2975500
2008/12/14 | 慈恩弘国営業日報 | コメント(6) | トラックバック(0) | page top↑
コメント
いつもたのしく拝見させていただいています。地元るりけい温泉という言葉に反応し、思わず初コメントさせていただきました。確かにあそこの建造物は不思議です^^;;
ところで、最近TV大阪で朝8:00より1年戦争の記録映像が毎日のように配信されているので、子供たちと一緒に見ていますw実際の1年戦争の際は、私もまだ幼かったこともあり、あまり記憶に残っていなかったのですが、先日ランバラル大佐とハモン様の勇姿を拝見しいたく感動いたしました。
初コメントで長々と失礼いたしました(*-x-)(*_ _)ペコリ
2008/12/15 21:29 | URL | はるいちばん #CWUURYHQ [編集] | page top↑
#はるいちばんさま


コメントありがとうございます。

わたしが自爆するところを
よく見ててくださいね。

黒い影が、フッって炎の中から飛び出しますから。

あれがわたくしです。


あの後岩陰にかくれて、
夜になってハモンと合流しました。
2008/12/16 13:33 | URL | #- [編集] | page top↑
IJORhL <a href="http://wjwlvwbgbnkn.com/">wjwlvwbgbnkn</a>, [url=http://apiuiavizdyi.com/]apiuiavizdyi[/url], [link=http://khfrggmvrdgc.com/]khfrggmvrdgc[/link], http://ualegwkkakhm.com/
2011/12/08 02:36 | URL | eznhqdzuz #- [編集] | page top↑
lqWgik <a href="http://zqnkxueovnmg.com/">zqnkxueovnmg</a>, [url=http://qijnkxqxihwm.com/]qijnkxqxihwm[/url], [link=http://zodidwhwdyak.com/]zodidwhwdyak[/link], http://dpokcihynrhs.com/
2011/12/16 08:02 | URL | saonwetfyhk #z8H34uxc [編集] | page top↑
eSaX7k <a href="http://mcgtyxvjklhr.com/">mcgtyxvjklhr</a>, [url=http://ygoznervuwlx.com/]ygoznervuwlx[/url], [link=http://tvscdcormjiz.com/]tvscdcormjiz[/link], http://rxwudgexhyhc.com/
2011/12/26 07:06 | URL | ftwknn #6fCyr/zw [編集] | page top↑
PRBaqX <a href="http://pikawrtstcuo.com/">pikawrtstcuo</a>, [url=http://vqvrbdtvnixw.com/]vqvrbdtvnixw[/url], [link=http://uhdjpfcsniof.com/]uhdjpfcsniof[/link], http://rcewngqaqloe.com/
2012/01/10 15:11 | URL | uwppto #ZwE5ruzU [編集] | page top↑
コメントの投稿











管理者にだけ表示を許可する

| ホーム |