慈恩弘国営業日報0080222
わたしの名前はランバラル。
数知れぬ死線をくぐりぬけてきた、
元ジオン公国の軍人だ。


宇宙世紀008 2月22日(晴れ)

開店前、電話が鳴った。

なんと、
キシリア閣下本人からである。


あの一年戦争後、
閣下は京都の電気屋さんで働いている。

今日は部下のジーンと新兵を一人つれて
お越しいただけるということだ。

これは大変。大急ぎで店の仕込みをしていると、
開店の10分前に、ジーンがやってきた。

やはり、連邦の監視が厳しく、
今日もばらばらにこの店で落ち合うそうだ。

ジーンが、カバンから何かをとり出してわたしに見せてくれた。

ジーン渾身の傑作。
シャア専用ザクレロであった。

一年戦争末期。
シャア大佐の、度重なる失態に、
怒り心頭のキシリア閣下が、
罰として、

我が軍の誰もが、
「これに乗って死にたくないよね」。と、
搭乗を嫌がった、
ザクレロの機体を、
破廉恥に赤く塗って、ツノをつけ、

大佐を搭乗させようとした、
伝説の機体である。


せっかくなので、
我が国に展示することになった。

同胞諸君も帰国の際は、
鑑賞してほしい。


その後、閣下。新兵。がやってきた。

この日も閣下はごきげんであった。
ザク焼き、ドム焼き、
新作のシャア専用ゲルググ焼きを注文された。

シャア専用ゲルググ焼きは辛い。

閣下は、後先の事をあまり考えない人である。
お兄さんを殺害したときもそうであった。

思えば、アバオアクーの指揮なんて、
できるわけないのに、
その場の勢いで、ギレン総帥を殺害してしまって、

シャアを前面に押し立て、
自分はどうしようもなくなって、
逃げた方である。


シャア専用ゲルググ焼きの辛さに、
ひーひーお言いであった。


前回ご訪問の時に、
ワインをご所望であった閣下のために、
わたしは、ワインを仕入れておいた。

閣下はご機嫌でワインをお召しになれらた。
ワインのあてに、
オイスターダストメモリーチーズを注文された。

オイスターダストメモリーチーズは、
牡蠣のチーズ焼きである。
わたしはこのメニューが大好きだ。

閣下にも喜んでもらおうと、
特に大きい牡蠣を選んで焼いたのがまずかった。

ひとつ特に大きいのが、
中が冷たかった。

我が国の牡蠣は、
広島産の生食用冷凍牡蠣である。
生食用に加工済みなので安心して食べれるが、

中が冷たいのはいただけない。

わたしはその場で陳謝し慈悲を乞うた。


閣下のお裁きは寛大であった。

「もう一皿焼け」。とのおおせであった。


二度の失敗は許されない。

わたしは、洗って半解凍にした牡蠣を、
鉄板の上に置いて、チーズで覆い、
カップで蓋をして、
チーズの溶け具合で完成を判断する従来の工法にひと手間加え、

一度片面を焼いて裏返し、
チーズで覆う、両面焼き戦術で挑んだ。
しかし、この工法だと牡蠣が縮んで硬くなってしまう。

そこでカップで覆う瞬間に、水をひとさじ加え、
カップの中に強烈なスチームを発生させ、

牡蠣を蒸気で蒸し焼きにし、
ふっくらさせる技で挑んだ。

よし、美味そうに焼けた。


恐る恐る閣下に献上してみる。


美味しそうにワインで牡蠣を流し込んでいる。

どうやら大丈夫なようだ。
わたしは命拾いした。

この二皿はもちろんサービスである。


この日は、キシリア閣下ご一行様以外にも、
たくさんの同胞がやってきてくれた。

おなじお町内のM二等兵は、
ご一家で、

常連の、N軍曹、M伍長、

こちらも、常連。
バイク用品のKUSHITANIご一行さま、

バイクでお越しの新兵お二人に、
お父様が一年戦争に参加していたという、
少年新兵のお二人。

古い友人の、S夫妻。

などなど。


うれしいかぎりである。


ラストオーダーの時間をすこしまわって、
キシリア閣下ご一行が、出国の手続きを申請された。

この日の閣下は、
あきらかに飲みすぎ、食べすぎであった。

閣下は、ご持参されたキャベジンをお飲みになられた。
閣下はどうやら、いつもこのキャベジンのビンを
持ち歩いているらしい。


今の閣下は、
戦時中とちがい、
とてもキュートで美しく、聡明で品がおありである。

しかし、ときおり垣間見える、
ダンディーな一面には、
やはりザビ家の血をお引きであることを、
認めざるを得ない。


閣下は、本日のわたくしの功績に対し、
ご褒美をくだされた。

テレビの特売の日のお知らせをくださる事を、
約束してくれたのである。

我が家のブラウン管のテレビは、
今まさに寿命をまっとうし、
お役御免の時を迎えようとしているのだ。


辛いものや冷たいものを食べさせられたにもかかわらず、
寛容なお心でいただいたご容赦。

そんなわたくしにかけてくださったご温情。


わたしは、
ますますキシリア閣下のファンになってしまった。

あの、けち臭いマクベの上司である。
どんな了見の狭い方かとずっと思っていたが、
わたしの早とちりであった。

このランバラル。
まったく、汗顔の至りである。




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本日のクルー
店長:ランバラル大尉、オーナー:ハモン、捕虜:フラウボウ2号
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お好み焼き「慈恩弘国」
http://www.ms-06zaku.com/
2008/02/22 | 慈恩弘国営業日報 | コメント(0) | トラックバック(0) | page top↑
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